桐生くんには敵いません!

「あ、あの、私たちも三組なんです、よろしくお願いします」
「マジ? すっごい偶然! じゃあ、一緒に行こうよ。いやあ、声かけた相手が君たちで良かった、同じクラスなんてさ。奇跡だよね!」

 彼ののんびりした口調は一向に焦っていない様子。
 でも、そのマイペースっぷりが冷静さを取り戻させてくれて、二度目のチャイムが鳴り出した瞬間、全員の顔色が変わる。

「これって、本鈴だよね」
「しゃあない、アンタとはしばし休戦や、桐生」
「休戦もなにも争う気はないんで。福ちゃんに悪影響与える前に立ち去ってくんない?」
「なんやと? 人が下手に出てやっとるんに」
「なんか、君ってモテモテだね! 女子にも男子にも」

 入学早々、私を挟み込むように走り出す変な集団。

「う、あっ」

 三人の歩幅についていけず転びかけた私の腰を抱き留めたのは桐生くんだった。

「桐生くん……」
「大丈夫? 福ちゃん?」

 見上げた笑顔がまぶしくてドキドキしているのは、ときめいているからではない。
 そのまま獲物(私)を抱える猟師(桐生くん)スタイルで廊下を走り一年三組に飛び込んでしまったからである。
 髪を振り乱した美少女、汗だく笑顔ののほほんボーイ、王子様のような風貌の彼に小脇に抱えられて登場した私。
 その時浴びた視線は今思い出しても、本当に痛い。

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