「あれは、ホラ。さあちゃんに見惚れてたんだよ」
「そらないわ。あ、福か? 福のこと見とったんやないやろか、あまりに可愛い子がおるなって」
さあちゃんの言葉に私は乾いた笑いをこぼす。
さあちゃんは自覚なし姫である。本当に残念な美少女なのだ。
自分がモテているということを全く気付けない。そればかりか、いつもいつも私のことを可愛いという。
多分というか、本気で美的感覚がズレているのだ。
だって桐生くんに至っては「アンドロイドみたいな隙の無い顔しやがって。気持ち悪いわあ」なんて言ってたし。
「そういや昨日な、福の命日でお墓参り行ってきたんよ」
一瞬ギョッとするようなことを言い出して、私は死んでないとか言っちゃうとこだけど。
首から下げたロケットペンダントを出して、それを涙目で眺めるさあちゃんに事情を察した。
さあちゃんとの出会いは入学式の朝のこと。
桜の樹の下で寂しそうな顔をして、いつまでも学校の中に入ろうとしない美少女がなんとなく気になっちゃって声をかけたんだ。

