桐生くんには敵いません!

 ……アレ? 何これ、気のせいじゃない、よね?
 突然の笑い声が教室中に響き渡る。
 そうっと声のする教室の入り口に目を向けたら。

「いやあ、いいグーパンチだったわ」

 真っ赤な顔をして泣きながら笑っていたのは、まさかの桐生くんだった。

「あ、あの、桐生くんっ、あの」 

 死ぬほど慌てる私。一体いつから見てたの?
 こんなのマナちゃんたちに告げ口されたら、私二度と学校に来れなくなっちゃう。

「桐生くん! 誰にも言わないで、お願いだからっ」

 恥も外聞もなく涙ぐみながら桐生くんに頭を下げまくる。
 すると柔らかな声が耳に落ちてきた。

「……いいよ」

 顔をあげると天使のような微笑みを称えた桐生くん。
 夕日をバックにしてまるで後光まで射してるかのようだ。

 顔のいい人は心も美しいのか、私のような愚か者を許して下さるとは。
 許された、とホッとした瞬間。

「今日から俺の言うこと何でも聞いてくれるんならね」

 ね、って小首を傾げた美しい笑顔に思わず「はいっ」と元気よく返事してしまってから。
 ……あれ? 今何て言ったかな?