桐生くんには敵いません!

「桐生くんの家ってどの辺りなの?」

 あ、それ知りたい! マナちゃんナイス! 思わず聞き耳を立ててしまっている私。
 それまで桐生くんは、イエスかノーのみで質問に答えていたから、これにはどう答えるのかという興味心。
 そして、本当に桐生くんの家が知りたいと思っているのは私だけじゃないはずだ。

「ん~、そういうの個人情報って言うの知ってる?」
「え?」
「人との境界線を知らずに、ズケズケ踏み込んでくるプライバシー侵害女子って、東京じゃ絶対モテないから気を付けた方がいいよ? それに怖いじゃん? 住所知られたりしたら、つきまとわれそうで」

 小六男子とは思えない言葉使いに一瞬、シーンと静まり返った教室。マナちゃんの背中が固まっているように見えたけど。

「なんてね、冗談。そんなことする人いるわけないよね」

 桐生くんのクスクス笑う声に女子たちがホッとし賛同するように微笑み始める。

 その内次の授業を知らせるチャイムが鳴り、皆それぞれの席に戻って行き、私は自分の教科書をじっと見つめた。
 端が、思いきり折れている。間違いなく、マナちゃんのお尻のせいだ。

「教科書、すっごいプレスされてんじゃん」
「へ?」

 顔をあげたら、桐生くんが私の方を見ていた。