桐生くんには敵いません!


 真っ白に戻ったノートを前に呆然とする私に。

「ウソでもそういう時はスキって言っておいた方が、女の子はカワイイんじゃない?」

 なんて思ってもない言葉をつぶやき、ベエッと舌を出して朝礼を知らせるチャイムと共に去っていく桐生くん。

「信じられない……」

 真っ白になってしまったノートを前に泣きそうになる私の横で。

「來人って、小学生……、いや幼稚園児だよね」
「え?」
「ううん、なんでもない。あとでオレのノート写しなよ、望月さん」

 楽しそうに笑いながら、慰めてくれる梶くんに、ありがとうと頷いた。
 桐生くんも梶くんくらい優しければ、私だって少しは素直になれるのかもしれない。
 本当はコンマ五ミリくらい優しいところがあるのは知ってるし、ほんの一瞬くらいはいい人の時もあったりするけど、基本は悪魔。性格に難がありすぎるんだよね、残念なことに。
 不覚にもあの日、小六の春、桐生くんが転校してきた日の数時間は、私は彼のことを最強のアイドル様なんじゃないかって一瞬崇拝しかけた。
 この世に、こんなキレイな男の子が存在するなんて思わなかったもん。
 桐生くんという人は見た目同様、心もキレイなんじゃないかとすら思っていたあの日の私にこそグーパンチである。
 いや、黒歴史すぎて記憶に消しゴムかけたいわ! 消したいっ!