私は玄関のドアを静かに開く。
望愛
「ただいま戻りました……。」
少し冷たい外気と一緒に、
私の声が寮の中に広がった。
その瞬間……
隼人
「おかえり」
優希
「おかえり、望愛!」
ほぼ同時に聞こえた二つの声。
顔を上げると、
リビングの方から隼人君と優希君
がこちらを見ていた。
……なんで二人とも、
そんなにタイミングぴったりなの。
実はめっちゃくちゃ仲良しなのかな?
望愛
「材料、買ってきました。」
私がエコバッグを持ち上げると、
間髪入れずに隼人君が近近付いてくる。
隼人
「重ぇだろ、持つ。」
望愛
「あ、いえ、大丈夫です……」
隼人
「はいはい、大丈夫禁止な。」
有無を言わせない口調で、
隼人君は私からバッグを奪う
ように受け取った。
すると今度は、
優希君が一歩前に出る。
優希
「じゃあ俺、卵とか出すよ。」
望愛
「え、あの……」
優希
「望愛、気にしなくていいから。」
優希君はにこっと笑い、
自然にキッチンへ向かう。
……なんで二人とも、
こんなに張り切ってるの?
その様子を少し離れた場所から
見ていた宮部君が、くすっと笑った。
隆二
「はいはい、落ち着けお前ら。」
「手伝いは一人ずつな?」
隼人・優希
「「は?」」
同時に声を上げる隼人君と優希君。
やっぱりこの二人仲良しなのかも。
隆二
「二人とも同時に動くと邪魔だろ?」
隆二は冷静に続ける。
隆二
「三上さん、どっちか選んでいいよ!」
突然の選択肢に、私は目を瞬かせた。
望愛
「え……?」
視線の先では、
隼人君と優希君が無言で睨み合っている。
あれ?やっぱり仲良悪い?
空気、ピリピリしてる……。
ってか、何で選択系になってるの?
これは仕事なんだから、
私一人で大丈夫なんだけどなぁ。
でも、多分この二人は意地でも
手伝ってくれそうだよね……。
私が断っても……有難い事なんだけど…
望愛
「……じゃあ」
私は少し困ったように笑って、
望愛
「二人とも、お願いします。」
隼人・優希
「「……」」
一瞬の沈黙……あれ?私選択間違えた?
二人とも何も言わないんだけど。
そして……
隼人
「……仕方ねぇ」
優希
「……分かった」
二人は同時に一歩引いた。
けれど、その距離は微妙に近い。
隼人君は冷蔵庫を開けながら言う。
隼人
「オムライスだよな?」
望愛
「はい、今日はケチャップライスです。」
隼人
「ふーん」
隼人は横目で望愛を見る。
隼人
「良いじゃんオムライス。」
「望愛が俺の為に作るオムライス。」
望愛
「……良かったです。」
「後仕事なのでみんなに」
「作るオムライスです。」
隼人君はどこか楽しそうに口角を上げた。
隼人
「その線引き、嫌いじゃねぇ。」
一方……
優希君はまな板を準備しながら、
ちらりと私を見て言う。
優希
「俺、玉ねぎ切るね。」
望愛
「お願いします。」
包丁を持つ優希の横顔は真剣で、
その姿に、なぜか胸がきゅっとする。
男性が、料理する姿に感心を
持っているからなかな?
料理をしながらも、
二人の視線は何度も私に向けられる。
隼人
「火、強くねぇ?」
優希
「卵、今入れる?」
隼人
「フライパン俺が振る」
優希
「いや俺が……」
望愛
「ちょ、二人とも……」
望愛は思わず苦笑した。
「ちょっ……ちょっと待ってください。」
「大丈夫です。」
「私、ちゃんと出来るので。」
私のその言葉に、二人は一瞬だけ黙る。
隼人君が、
少し低い声で言った。
隼人
「……無理すんなよ。」
優希も、柔らかく続ける。
優希
「困ったら、すぐ言ってね。」
その言葉が、胸の奥にじんわり染みた。
……あれ?
私……
こんなふうに心配される立場だったっけ?
そんな事を思いながらも
私は、手際いよく調理し、
オムライスが出来上がって
テーブルに並べる。
隆二
「おお、うまそう!」
「三上さん、さすが!」
宮部君が素直に感心してくれる。



