鈴村君の裏の顔


暗闇の中……

ポップコーンに伸ばした手が触れる。

指先が絡まりそうになる。

俺は、そっと望愛の
小指に触れたまま、離さない。


誰にも見えない独占……

スクリーンより、
隣の横顔を見つめる時間のほうが長い。

やばいな……これ……
好きすぎる。

呼び捨てにされた余韻が、
まだ胸の奥で暴れてる。


望愛……

もう俺……後戻りできないよ。

君が俺の名前をあんな風に呼んだ瞬間、

たぶん俺は……
本気で独占したくなった。

映画のラストシーンが流れる中、

俺の視線はずっと……
スクリーンじゃなくて、隣の君だった。




エンドロールが流れ終わり、
場内に明かりが戻る。

私は小さく息を吐いた。


「……終わったね。」

スクリーンから目を離して、
隣を見る。

優希君はまだ、
映画の余韻に浸っているようで、
少しだけぼんやりしているように見えた。


「優希……君?」

私は呼び方を前に戻し声をかけると、
はっとしたようにこちらを見る。


「……あ、ごめん。」

でも、その顔が明らかに赤い。
耳まで、真っ赤。


「……どうしたの?」

私は思わず覗き込む。


「顔、赤いけど。大丈夫?」



俺は一瞬固まり、
それから望愛からの視線を逸らした。


「だ、大丈夫……」

でも俺声が上ずっている。

「たぶん……その……」

言葉を探すみたいに、
口を開いては閉じる。



本当……優希君どうしちゃったの?
私は首を傾げたまま、ふと思いつく。

「私達お昼、まだだよね。」

優希君がこちらを見る。

「映画も終わったし……」
「よかったら、ランチ行かない?」


望愛がそう言った瞬間。
俺のの顔が、さらに赤くなった。


「……え!?///」


「あれ?もしかして……」
「お腹空いてない?」



「あっ……いや……」
「……す、空いてる……よ。」

うわー俺、声小さっ……。
不意打ちに誘われてだけでこんなに
動揺して、頭ん中真っ白になって……

必死で嬉しさを隠そうとしてるのに、
全然隠れてない。


「……誘ってもらえると思わなかった。」

ぼそっと呟く。


「そんな大げさな……。」

望愛はクスっと笑いながら
笑顔を向けた。

「行こ?」

俺は一度深呼吸してから、
こくっと頷いた。




私達は映画館の近くにある、
ファミレスに到着した。


昼のピークを少し過ぎていて、
店内は程よく落ち着いている。

これなら、
優希君も落ち着いて食べれるね。

向かい合わせに座り、メニューを広げる。


「何にする?」



「んー……」

優希君は悩みながら、
ちらっと私を見る。

「あっ、望愛……」
「シェア、する?」


「それ、いいね!」

自然にそう言葉が出る。

結局私と優希君は、
パスタ、ピザ、サラダを
タッチパネルから選択する。



「この位の量だったら」
「二人だし、ちょうどいいよね。」


「うん、そだね。」
「料理来るの楽しみだなぁ。」


注文を終えると、
少しだけ沈黙になる。

でも、気まずさはなくて
むしろ、静かなドキドキ感があった。

グラスの水に手を伸ばした時、
優希君が口を開いた。


「……ねえ。」


「なに?」

少し真剣な声。

「俺さ……」

指先を組みながら、
言葉を選ぶ。

「小学生の頃、覚えてる?」


「うん、部分忘れてる」
「ところもあるけど、」
「覚えてるよ。」


「あの時さ……」
「一緒に遊んで、喧嘩して、」
「また仲直りして……。」


不器用な言い方に、
自分で言って苦笑する。


「あの頃みたいにさ……」


優希君は一度、私を見る。
真っ直ぐな目で真剣なのが
言われなくとも心から伝わってくる。


「……また、友達になってよ。」

お願いするみたいな声。

私は一瞬、言葉を失う。

でも、もうとっくに
答えは決まっていた。

「……うん。」

そう返すと、
優希君の表情が一気に明るくなる。