鈴村君の裏の顔


指差すと、
隼人は立ち止まり、建物を見上げた。

「へぇー」
「なかなかだな。」


「普通のとこですけど……。」


「一人で住むには十分だろ。」

そう言われて、
なぜか少しだけ誇らしくなる。


……本当に、家の前まで来ちゃった。


駅までのはずが、
電車に乗って、
こうして並んで歩いて。

強引なのに、
自然に流されてしまった自分に、
少しだけ戸惑いながら。


けれど、
隼人君がここまで送ると決めた理由を、
私はもう、なんとなく分かっていた。

きっと、いつもより帰る時間が
遅くになって心配したから送ってくれた
に違いない。


マンションの前に着いた頃には、
空気はすっかり夜の色に染まっていた。



「……送ってくれて、」
「ありがとうございました。」

私はエントランス前で
鍵を取り出しながら言うと、
隼人君は壁にもたれて、軽く腕を組む。

その彼の姿が本当にオーラがあった。
変装してるのに、オーラが隠しきれてない。


「当たり前だろ。」

その言葉に、
胸がじんわり温かくなる。

ふと、私は思い出したように
隼人君の顔を見上げた。


「あっ……あの。」


「何だ?」


「帰り、大丈夫ですか?」


望愛のその言葉に、
俺の目がゆっくり細まるのを自分
でも分かった。


「へぇー」

駄目だ……口元が、にやりと上がる。


「心配してくれんだ?」


「……え」


「俺のこと苦手なのに?」


俺の言った発言で、
望愛の時間が止まった。
完全に硬直している。


「っ……!?」

彼女は目を見開き、
分かりやすく肩が跳ねる。


「な、な、な、何のことですか!?」

声が一段高くなっている。

視線が泳ぐ。
指先が落ち着きなく鍵をいじる。

完全に、動揺している。

俺はそれを見逃さなかった。


……バレバレな仕草。


必死に誤魔化そうとしているのが、
逆に可笑しくて。

そして、可愛くて。

やべぇ……すげー可愛い……
反則なんだよ……。

心の中で、素直に呟く。

わざと一歩近づくと、
望愛は反射的に一歩下がる。

けれど、俺は逃がさない。


俺は、ふっと手を伸ばし、
望愛の柔らかなロングヘアーの
毛先を指先で軽くすくった。


当然さらり、
と柔らかな感触が指先が拾う。