キッチンから、
ふわりと温かい匂いが流れてきた。
望愛
「……できました。」
望愛の声と同時に
大きめのトレーに料理を乗せ、
慎重にリビングへ運ばれてくる。
湯気の立つ料理。
色合いもよくて、
一目で“ちゃんと作られたご飯”だと分かる。
彩りのいいおかず。
栄養のバランスも考えられていて、
どこか家庭的な安心感がある。
隆二
「うわ、うまそう」
「これ、店レベルじゃね?」
隆二が素直に声を上げる。
翔太
「さすがだな。」
翔太も感心したように頷いた。
俺はと言うと……
テーブルに料理が置かれるその一瞬、
望愛の横顔から目を離せなかった。
何もかもが愛おしいく思えてしまう。
望愛は嬉しそうに小さく会釈をして、
テーブルに料理を並べ終えると、
エプロンの端をきゅっと整えた。
望愛
「それじゃ……」
ぺこりと、丁寧に頭を下げる。
望愛
「これで私は失礼します。」
その言葉に、
一瞬だけ、空気が止まった。
……帰る?
望愛のその選択が、
当たり前のように口に出しているのが、
なぜか胸に引っかかる。
翔太
「三上さん、待って。」
声をかけたのは、翔太だった。
穏やかな表情で、
でも自然に、望愛に話しかける。
翔太
「せっかくだしさ、」
「三上さんも一緒に食べてから帰りなよ。」
望愛
「え……?」
私は、目を瞬かせる。
えっ……?私がMOONのメンバーと……
夕飯を食べ……る?
そんなの由佳やファンの子に知られたら
私……息の根止められそう……(笑)。
翔太
「沢山作ってくれたんだし」
「俺らだけ、食べるのもったいないし。」
「それに、みんなで食べた方が楽しいだろ?」
森下君のその言葉に
即座に、便乗する声が重なった。
隼人
「望愛、」
隼人君だった。
短く、でも迷いのない声。
隼人
「一緒に食うぞ!」
命令口調に近いその言い方に、
私の肩が少し跳ねる。
本当……この人の裏表には
ある意味関心しちゃう。
テレビの前での隼人君と
プライベートの隼人君……
差がありすぎだってば……。
そんな事を考えていると……
優希
「俺も……」
今度は優希君が話してくる。
柔らかい口調だけどはっきりと
言葉を言う。
優希
「望愛ちゃんと一緒に食べたい。」
優希のその一言に、
俺の目が一瞬だけ鋭くなるのを
自分でも自覚した。
隆二
「ほらほら(笑)」
隆二が笑いながら手を叩く。
隆二
「みんなで食べた方が、」
「絶対うまいって。」
四方向からの視線を感じる。
私は断る理由が、
どこにも見当たらなかった。
望愛
「……じゃあ。」
私は少し困ったように笑って、
小さく頷く。
望愛
「お言葉に甘えます。」



