泡のような世界で君と恋をする

 目を覚ますと、そこは静かな海の底だった。

 眠っていた、という感覚はない。
 ただ、意識が途切れて、気づいたらここにいた。

 身体は水の中にあるはずなのに、苦しくない。
 呼吸も、心臓の音も、ちゃんとある。

「……夢?」

 呟いた声は、水に溶けることなく耳に届いた。

「夢じゃない」

 即答だった。

 視線を上げると、あの人魚――がそこにいた。
 岩を削ったような寝台の脇に立ち、私を見下ろしている。