泡のような世界で君と恋をする

「……引きずられた跡?」

セリオの声が低くなる。

「争った形跡、だよな……」

ルシアは、その痕跡の先を見つめていた。

「澪……」

胸の奥で、確信が形になる。

誰も、澪が森へ行くと言ったのを聞いていない。
だから、誰も止められなかった。

――そして。

「……攫われた、可能性が高い」

ルシアの言葉に、全員が息を呑む。

「そんな……」
「まだ、決まったわけじゃ……」

「決まっている」

感情を押し殺した声だった。

「この海で、“痕跡だけ残して消える”のは、事故じゃない」

静寂が、重くのしかかる。