泡のような世界で君と恋をする

 次の瞬間、強い腕に抱き寄せられる。
 口元に触れた何かから、冷たい空気が流れ込み、私は反射的に息を吸った。

 苦しさが、すっと引いていく。

 ゆっくりと目を開けると、そこはもう、知っている海ではなかった。

 淡い光が揺れている。
 泡のように、現実味のない世界。

 そして、私を抱いている存在――
 人ではない、と直感で分かった。

 長い髪が水の中で静かに揺れ、腰から下は鱗に覆われた尾。
 人魚。