冬の匂いを覚えている









別れはいつも突然だった。





突然のふりをして、ずっと前から準備されている。


あの日もそうだった。










「もう無理だと思う」



彼はそう言った。

夕暮れの河川敷で、風が強かった。



「何が?」

私は聞いた。





本当は分かっていた。

でも分からないふりをした。




「俺が」

彼は言った。


「君を好きでいることが、怖くなった」



私は黙った。

言葉が出なかった。









恋愛は時々、幸福より先に恐怖を連れてくる。


失うことを想像してしまうからだ。





彼は続けた。


「君は、俺がいなくても生きていける」


それは優しさの形をした残酷だった。





「……生きていけるよ」

私は言った。


「でも、生きていく理由が減るだけ」


彼は目を伏せた。






その瞬間、私は知った。

恋は終わるのではない。

終わらせるのだ。