両手でも抱えきれない愛で贖えるものならば

「私ね⋯⋯不安で仕方なかったの。ずっと、及川くんとは相思相愛だと信じてきたけど、ある人に、単なる私の片想いじゃないんじゃないかって言われて、急に不安になってしまって⋯⋯」

「その人は、何なの?」

「ピアノ弾いてるレストランで知り合った、ただのしつこい客。誤解しないでね?その人とは何でもないから⋯⋯」

何を言い訳しているのだろう。

一時は見失った彼の気持ち⋯⋯今ならば、ちゃんと判るのに。

突然、あんなことを言い出して、どれだけ傷つけただろう。

そして、やはり私のことを好きで居てくれたということを知ることができても、今更どう言うべきなのかわからない⋯⋯。


店内が混んできたので、私たちはカフェを出ることに。

久しぶりに並んで歩いていたら、夕立にあった。

「酷い雨だな⋯⋯うちで雨宿りしていったらいいよ」

珍しく、サッと私の手をとると、彼は走り出す。