両手でも抱えきれない愛で贖えるものならば

及川くんは、余計なボディタッチはしない人だ。

それこそ、

「危ないよ」

と、人混みの中、遠慮がちに引き寄せられたりする程度。

それこそデート中さえ、手を繋いで歩いたりもしない。

「アンタ、本当に彼氏いるのか?」

「しつこいですね⋯⋯いるって言ってるじゃありませんか」

「ふーん。何してる人?」

「⋯⋯普通のサラリーマンです」

「エリート?」

嫌なことを聞くな⋯⋯と思いつつ、

「まだ社会人2年目なので、それは未知数ですが」

「何年付き合ってる?」

「5年目です」

「ふーん。そんなに長く付き合ってる相手が居る割に、アンタの反応がいちいちウブなのは、わざとそういう芝居でもしてるわけ?」

何が言いたいのかサッパリわからない。

「かなり鈍い女みたいだから、ズバリ聞くよ。その男とは相性いい?」

「よくなかったら、5年も付き合いません」