君が世界の中心で


 「心桜(みお)!何組?」
 「5組、琥珀(こはく)は?」
 「私8組、階もちがっちゃうね」
 3月の終わり、離任式の後に発表された中学最後のクラス。この後も部活か、なんて思うと正直クラスメイトなんてどうでもよかった。多分1人くらいは友達がいるだろうし、例えひとりぼっちになってももう慣れたものだと思ってた。琥珀とちがったのは残念だけど琥珀はきっとクラスが変わったくらいじゃ私から離れない。
 「じゃあね心桜、私のこと忘れないでね。他の女に目移りしないでよね!?」
 「忘れないけど新しいクラスにどんな美人がいるか楽しみだなー」
 「ひどい!!」
 「冗談だよ、またあとでね」
 「うん!またねー」
 貯めすぎた置き勉の入った重たい鞄を担いで3年生のフロアへ向かう。昨日までは近寄るのも怖かったのにこれからはここで生活するとなると変な感じがする。
 肩にくいこんだ鞄のせいで階段が辛い。元々歩くのが遅いせいで周りが私を追い抜いていく。
 流石と言うべきか、一学年300人のマンモス校なだけあって人が多い。朝練後の運動部の匂いや、おばさん先生の香水の匂い、談笑しながら周りにぶつかっているのを無視して進む陽キャ。
 やばい酔いそう
 本当に気分が悪くなってくる、
 だけど追い抜いて行く人の中に、ふわりと香る柔軟剤のいい匂いがした。
 「なにその鞄、楽器でもはいってるの?」
 冗談混じりに隣を歩く人影に思わず振り向くことが出来なかった。
 でも分かる、安心する匂いに声、この小さい影。
 「日之出(ひので)じゃん、何組?」
 「5組」
 「いっしょだ」
 「まじで?やったね」
 クラスメイトなんてどうでもいい、ごめんなさい撤回させてください。私は日之出といっしょがよかったんです。
 今すごく嬉しい、鞄の重みなんて関係なく飛び跳ねそうだ。それに琥珀、ごめんよ。ほんとにいたよ美人、めちゃくちゃ美人。長いまつ毛に白い肌、メガネが似合う華奢な人。琥珀と同じ、でも意味が違う大好きな人。
 「1年間よろしく」
 声だってこんなに綺麗。
 「うんよろしく」
 神様とかあんまり信じてないけど、最後の1年日之出といっしょにしてくれてありがとうございます。