今日は待ちに待った碧先輩との初デート当日。
私は公園の時計台の下、彼氏である碧先輩がやって来るのを待っていた。
碧先輩は私と同じ高校に通う三年生。図書委員会で一緒になったのをきっかけに、私が先輩に一目ぼれ。
半年の片想い期間を経て、一週間前に私の方から告白しお付き合いが始まった。
絶対に振られると思っていたから、「いいよ、付き合おうか」と返事をもらった時は聞き間違いかと思ってしまったぐらいだった。
いやぁ、イチかバチかの精神って案外大事なんだなぁ。
......なんて考えていたら。
公園の入り口の方から忙しない靴音が聞こえてきた。
顔を上げると、こちらに向かって全速力で走る碧先輩の姿が見えた。
先輩は今日も黒縁メガネが世界一似合っている。
「先輩!」
私は先輩に向かって大きく手を振った。
先輩は時計台に近づくにつれ、徐々に走る速度を落とし、私のそばに来る頃にはもう完全に歩いていた。
「はぁはぁ。おまたせ」
「大丈夫ですか? 先輩。ベンチで休みますか?」
私は近くのベンチを一瞥して、そう提案した。
「そうさせてもらおうかな」
私たちはベンチに並んで腰かけた。
「走らなくても良かったのに」
「はぁはぁ......ごめん。君に一秒でも早く会いたくて。やっぱり、慣れないことはするもんじゃないね」
「そうですよ。私たちって、本来インドアな人間なんですから」
平静を装って返事をしたけど、
頭の中では『君に一秒でも早く会いたくて』という呟きがしつこくリピート再生されていた。
先輩の方からそんなことを言ってくれるなんて思ってもみなかったよ。
「子供ってほんとに元気だよねぇ」
嬉しさをかみしめていると、先輩が突然話しかけてきた。
「えっ、何の話ですか?」
そう訊ねると、先輩は自分の目の前を指さした。
目の前には芝生が広がっていて、小学生くらいの男の子たちがバドミントンを楽しんでいた。
「そうですねぇ」
「あっ。そういえば、俺、体育の種目の中でバドミントンだけは好きというか得意だったんだよね」
「えっ、私もです! 奇遇ですね」
思わず先輩の顔を覗き込むと、先輩と視線が絡んだ。
「じゃあ、バドミントン教室一緒に通う?」
先輩は私から視線を合わせたままそう言った。そのせいでなんてことない提案が胸キュンワードみたいに聞こえる。
甘ったるい空気に耐え切れなくなった私は、先輩から視線を逸らした。
「……検討させてください」
「うん、いいよ。ていうか喉乾いたね。確か公園に自販機あったよね。君は何飲みたい?」
「麦茶でお願いします」
「オッケー」
そう言いながら先輩が立ち上がった時だった。
バドミントンのシャトルが先輩のメガネめがけて、すごいスピードで飛んできているのが見えた。
「先輩、危ない!」
「へ?」
「あ、あの! 前、シャトルが‼」
こんな言葉で状況が伝わるはずもなく。
――パリィイン‼
鋭い音と共に、先輩のメガネに大きなひびが入った。
「びっくりした……」
先輩はすっかり腰が抜けてしまったようでそのままベンチに腰を下ろした。
「大丈夫でした? メガネ」
「これは買い替え不可避だな」
そう言いながら、先輩はメガネを外した。
「なんも見えない…。君、どこにいるの?」
先輩は色んな方向に両腕を伸ばし、手探りで私を見つけようとしているみたいだった。
「ふふっ、ここにいますよ」
そう言うと、先輩は私に顔を近づけてきた。
「ほんと?」
「はい、でもちょっと近づきすぎです……」
陶器のように滑らかな肌に、長い睫毛、通った鼻筋。
距離が近すぎるせいで先輩の顔のパーツ一つ一つがくっきりと見える。
やっぱり綺麗な顔してるなぁ。
......なんて見惚れていたら。
「見つけた」
低い囁きと共に唇に柔らかい感触が伝わった。
まさかあんなハプニングがキスに繋がるなんて。ありがとう、バドミントン少年。
私は公園の時計台の下、彼氏である碧先輩がやって来るのを待っていた。
碧先輩は私と同じ高校に通う三年生。図書委員会で一緒になったのをきっかけに、私が先輩に一目ぼれ。
半年の片想い期間を経て、一週間前に私の方から告白しお付き合いが始まった。
絶対に振られると思っていたから、「いいよ、付き合おうか」と返事をもらった時は聞き間違いかと思ってしまったぐらいだった。
いやぁ、イチかバチかの精神って案外大事なんだなぁ。
......なんて考えていたら。
公園の入り口の方から忙しない靴音が聞こえてきた。
顔を上げると、こちらに向かって全速力で走る碧先輩の姿が見えた。
先輩は今日も黒縁メガネが世界一似合っている。
「先輩!」
私は先輩に向かって大きく手を振った。
先輩は時計台に近づくにつれ、徐々に走る速度を落とし、私のそばに来る頃にはもう完全に歩いていた。
「はぁはぁ。おまたせ」
「大丈夫ですか? 先輩。ベンチで休みますか?」
私は近くのベンチを一瞥して、そう提案した。
「そうさせてもらおうかな」
私たちはベンチに並んで腰かけた。
「走らなくても良かったのに」
「はぁはぁ......ごめん。君に一秒でも早く会いたくて。やっぱり、慣れないことはするもんじゃないね」
「そうですよ。私たちって、本来インドアな人間なんですから」
平静を装って返事をしたけど、
頭の中では『君に一秒でも早く会いたくて』という呟きがしつこくリピート再生されていた。
先輩の方からそんなことを言ってくれるなんて思ってもみなかったよ。
「子供ってほんとに元気だよねぇ」
嬉しさをかみしめていると、先輩が突然話しかけてきた。
「えっ、何の話ですか?」
そう訊ねると、先輩は自分の目の前を指さした。
目の前には芝生が広がっていて、小学生くらいの男の子たちがバドミントンを楽しんでいた。
「そうですねぇ」
「あっ。そういえば、俺、体育の種目の中でバドミントンだけは好きというか得意だったんだよね」
「えっ、私もです! 奇遇ですね」
思わず先輩の顔を覗き込むと、先輩と視線が絡んだ。
「じゃあ、バドミントン教室一緒に通う?」
先輩は私から視線を合わせたままそう言った。そのせいでなんてことない提案が胸キュンワードみたいに聞こえる。
甘ったるい空気に耐え切れなくなった私は、先輩から視線を逸らした。
「……検討させてください」
「うん、いいよ。ていうか喉乾いたね。確か公園に自販機あったよね。君は何飲みたい?」
「麦茶でお願いします」
「オッケー」
そう言いながら先輩が立ち上がった時だった。
バドミントンのシャトルが先輩のメガネめがけて、すごいスピードで飛んできているのが見えた。
「先輩、危ない!」
「へ?」
「あ、あの! 前、シャトルが‼」
こんな言葉で状況が伝わるはずもなく。
――パリィイン‼
鋭い音と共に、先輩のメガネに大きなひびが入った。
「びっくりした……」
先輩はすっかり腰が抜けてしまったようでそのままベンチに腰を下ろした。
「大丈夫でした? メガネ」
「これは買い替え不可避だな」
そう言いながら、先輩はメガネを外した。
「なんも見えない…。君、どこにいるの?」
先輩は色んな方向に両腕を伸ばし、手探りで私を見つけようとしているみたいだった。
「ふふっ、ここにいますよ」
そう言うと、先輩は私に顔を近づけてきた。
「ほんと?」
「はい、でもちょっと近づきすぎです……」
陶器のように滑らかな肌に、長い睫毛、通った鼻筋。
距離が近すぎるせいで先輩の顔のパーツ一つ一つがくっきりと見える。
やっぱり綺麗な顔してるなぁ。
......なんて見惚れていたら。
「見つけた」
低い囁きと共に唇に柔らかい感触が伝わった。
まさかあんなハプニングがキスに繋がるなんて。ありがとう、バドミントン少年。



