偽カノ始めたら、彼の本気が止まらない件

羽菜に相談したかったけれど、デートって話をしたら服よりも出かける方に食いついてきそうだったから、言えなかった。

桐谷君に私服のガチ度を聞いておけばよかったかな。


『雫の私服、楽しみにしてるね?めっちゃ惚れると思う!』


ハンガーにかかっている服を見ながら、桐谷君に言われた言葉を思い出す。

……そんなこと言われても、ねえ?

恥ずかしげもなく、サラッとそういう事を言えるなんて、慣れているとしか思えないんだけどな。

言われ慣れてないけれど、『どうせ演技』という呪文を心の中で唱えれば、平常心でいられる。

……のに、何で桐谷君と出かけるだけで、こんなに私服で悩まなくちゃならないのよ。

まあ、デートだから気合い入れてきましたって感じに見えなければいっか。

……いいのかな、本当に。

自問自答を繰り返しながら、私は頭を抱えて、盛大なため息をついた。