桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~

 乱れのない綺麗な旋律。ヴァイオリンが奏でる音色が、祝福を伝えている。中央で光を帯びるシャンデリアがいつもより綺麗に見えて、思わず目が輝いた。
 下を見ると会場に集まっている人達が拍手をしてくれている。
 皆、私の誕生日を祝ってくれているんだ。
 そう思ったら、涙が滲むくらい嬉しかった。胸が暖かくなる。誕生日を祝われるのはこんなにも幸せなんだって、また思う事ができて、沢山の人が祝ってくれて、すごく幸せだ。
「お誕生日おめでとう、アリス!」
「お誕生日おめでとう!」
「十四歳おめでとう!」
 沢山の人達が下から何度もおめでとうと叫んでくれた。恥ずかしさもあるけれど、やっぱり嬉しい気持ちでいっぱいになる。高ぶる気持ちを抑え、思わず隣を歩く女王様を見た。
「何よ」
 女王様がムスっとしてこちらを睨んできた。照れているってことはお見通しだ。今日は伝えたい気持ちが勝って、茶化すことはしない。
「女王様」
 ありがとう
「ありがとう。パーティーを開いてくれて」
 ありがとう
「ありがとう。育ててくれて」
 ありがとう
「すごく、すごく嬉しいよ」
 女王様に逢えて良かった。そう言うと女王様は少し赤くなって言った。
「バカね、ほら、しっかり前見ないと階段から落ちるわよ」
 私が慣れない事を言ったからなのか、それ以降顔を反らしてこっちを見ようとしない。金色の艶やかな髪が、女王様の表情を隠す。
 階段を降りると、黒髪の少女がこちらに駆け寄って来た。
 エメラルドと水色に染められたシンプルなドレスが、私とは対称的だ。見慣れないドレス姿だったけれど、直ぐに誰だか分った。
 女王様はリズを見ると、そそくさとどこかに行ってしまった。
「リズ!」
「アリス、誕生日おめでとう」
「ありがとう! 来てくれて嬉しい!」
「ふふ、私はアリスの親友なのだから、来るのは当たり前でしょう? アリスったら、今日のことすっかり忘れているんだから。さぁ、見て」
『ふふ。明日、ね』
 そう言って笑って見送ってくれたのは、私がパーティーをすっかり忘れていたからだったんだ。
 リズは手に持っていた紙を私の前に出す。白い封に城の紋章がついた、この手紙は。
「招待状?」
「女王様が私を招待くださったのよ」
 女王様! ちゃんとリズにも贈ってくれたんだ。
 私が呆けていると、リズはクスリと笑い、スカートの影から小さな箱を出す。箱はピンクのリボンと、白地に金の模様が描かれた紙でラッピングされていて、とても可愛い。
「プレゼントよ。受け取って」
「わぁ! ありがとう! ねぇリズ、今開けていい?」
「勿論よ」
 リズから箱を受け取り、勿体ないと思いながらも紐解いていく。
「わぁ! 赤いリボン!」
 プレゼントを開けると、中からふんわりとした赤いリボンが出てきた。
「髪を縛るでしょう? 勿論二つあるわよ」
 リズの言う通り、赤いリボンは二つ。どちらも鮮やかな赤色が凄く綺麗!
「アリスの桃色の髪には赤が似合うわ」
「ありがとう! 大事にするね!」
 貰ったリボンを暫く見つめた後、失くさないように箱に戻す。リズからの素敵なプレゼントを嬉しく思いながらも、ふと使命のことを思い出して、気持ちが沈んだ。
「アリス? どうしたの?」
「リズ、あのね」
 使命を全うする、なんて。何をしなければいけないのかを分かっていても、出来るかどうかは分からなくて、不安で。