そして二つ目の呪いは、暗黒の魔女に抗おうとした、アリスとその仲間達にかけられた酷く残酷な呪い。呪いをかけられたある者は狂気に狂い、そしてある者は運命を切り裂かれる。その呪いは千四百年前からずっと続いていて、今も人は呪いに縛られ生きている、そう教わった。
「アリス、呪いは解ける。あんたが崩壊を止めるのよ」
体がずっしりと重くなる。
崩壊を止めるには、白ウサギと黒ウサギ、どちらかの時計を止めれば良い。そうすれば、不思議の国の崩壊は止まる。止めるのがアリスの使命――
時計を止めて崩壊が止まるなら、一見なにも問題はないように思える。
けれど実際はアリスに選ばれたウサギは残り、選ばれなかったウサギは消える。
白ウサギを選べば黒ウサギが消え、黒ウサギを選べば白ウサギが消える。
ウサギを選ぶ。それがアリスに与えられた使命。どんなに嫌でも、逃げる事は許されない。してはならない。
私が止めなければ世界が崩壊する。
「でも、私が、どちらか片方の時計を止めたら――」
もう片方は――消えてしまう
「選ぶの。それがアリスの使命。時計を止めて、不思議の国の崩壊を防ぐのよ。全ての代のアリスがそうしてきたわ」
それはつまり、国と国の人々のために一人の者が犠牲になってきたと言うことだ。
国の為、人々の為、そう言って人を犠牲にしていいの?
女王様を見ると瞳には冷たい光が宿っていた。その瞳は私の考えている事を悟り、それを考える事は許さないと伝えている気がした。
私に、選ぶことが出来るだろうか?
白ウサギと黒ウサギ、そのどちらかを――
女王様は私の不安を見透かすように見つめ、口を開く。
「選ぶのは、あんたの自由。好きなほうを選びなさい。どちらを選んだって、結果は同じよ」
どちらを選んだって結果は同じ。
その言葉に、ズキリと胸が痛む。
本当に、一緒?
その疑問がひたすら頭の中をぐるぐると回る。
「女王様、でも、私」
「世界の崩壊はもう始まっているわ。手筈は整っているの。今までウサギの監視をしてきた。そして先日より兵士に二人のウサギを来させるように手配済みよ。今日の二十四時にウサギが儀式の間にやってくるわ」
私の考えを打ち消すかのように、女王様が厳しく言い放った。
不思議の国の崩壊。
その言葉が酷く恐ろしく感じて、思わず手をぎゅっと握り締める。心臓がドクンと脈うつのが分かった。連想したのは私が住むこの街が、この城が、崩壊する場面。不思議の国の中心にあるこの城が崩壊するのなら、逃げ場などない。皆死んでしまう。
「アリス」
突然耳元で響いた声に驚いて振り向くと、先程まで柱の影にいた彼が隣にいる。
今度は違った理由でドキドキとする心臓を押さえながら、素顔の見えない彼を見つめる。
な、何だろう。
「大丈夫だよ」
「え?」
予想しなかった言葉に驚きながらも、次第に硬直が解けていく。知らない人のはずなのに、その声を聞くとなぜか安心する。
視界の端で何かが揺れた。その何かに視線を移すと、彼の後ろには、長くて、動物によくある、尻尾。
「どうしたんだい?」
じっと見つめる私の様子を変だと感じたのか、彼は不思議そうに尋ねてくる。
「どうしたんだい? って、猫?」
「僕はチェシャ猫だよ」
チェシャ猫、と聞いて、昔聞いた話を思い出す。選ばれたアリスの元には必ずチェシャ猫がやって来る。世界の崩壊の知らせと共に。パニックで、すっかり客が誰なのかを忘れていた。
「最悪の時、チェシャ猫が役目を負うわ。その最悪が、起こらない事を祈っているのだけれど」
「アリス、呪いは解ける。あんたが崩壊を止めるのよ」
体がずっしりと重くなる。
崩壊を止めるには、白ウサギと黒ウサギ、どちらかの時計を止めれば良い。そうすれば、不思議の国の崩壊は止まる。止めるのがアリスの使命――
時計を止めて崩壊が止まるなら、一見なにも問題はないように思える。
けれど実際はアリスに選ばれたウサギは残り、選ばれなかったウサギは消える。
白ウサギを選べば黒ウサギが消え、黒ウサギを選べば白ウサギが消える。
ウサギを選ぶ。それがアリスに与えられた使命。どんなに嫌でも、逃げる事は許されない。してはならない。
私が止めなければ世界が崩壊する。
「でも、私が、どちらか片方の時計を止めたら――」
もう片方は――消えてしまう
「選ぶの。それがアリスの使命。時計を止めて、不思議の国の崩壊を防ぐのよ。全ての代のアリスがそうしてきたわ」
それはつまり、国と国の人々のために一人の者が犠牲になってきたと言うことだ。
国の為、人々の為、そう言って人を犠牲にしていいの?
女王様を見ると瞳には冷たい光が宿っていた。その瞳は私の考えている事を悟り、それを考える事は許さないと伝えている気がした。
私に、選ぶことが出来るだろうか?
白ウサギと黒ウサギ、そのどちらかを――
女王様は私の不安を見透かすように見つめ、口を開く。
「選ぶのは、あんたの自由。好きなほうを選びなさい。どちらを選んだって、結果は同じよ」
どちらを選んだって結果は同じ。
その言葉に、ズキリと胸が痛む。
本当に、一緒?
その疑問がひたすら頭の中をぐるぐると回る。
「女王様、でも、私」
「世界の崩壊はもう始まっているわ。手筈は整っているの。今までウサギの監視をしてきた。そして先日より兵士に二人のウサギを来させるように手配済みよ。今日の二十四時にウサギが儀式の間にやってくるわ」
私の考えを打ち消すかのように、女王様が厳しく言い放った。
不思議の国の崩壊。
その言葉が酷く恐ろしく感じて、思わず手をぎゅっと握り締める。心臓がドクンと脈うつのが分かった。連想したのは私が住むこの街が、この城が、崩壊する場面。不思議の国の中心にあるこの城が崩壊するのなら、逃げ場などない。皆死んでしまう。
「アリス」
突然耳元で響いた声に驚いて振り向くと、先程まで柱の影にいた彼が隣にいる。
今度は違った理由でドキドキとする心臓を押さえながら、素顔の見えない彼を見つめる。
な、何だろう。
「大丈夫だよ」
「え?」
予想しなかった言葉に驚きながらも、次第に硬直が解けていく。知らない人のはずなのに、その声を聞くとなぜか安心する。
視界の端で何かが揺れた。その何かに視線を移すと、彼の後ろには、長くて、動物によくある、尻尾。
「どうしたんだい?」
じっと見つめる私の様子を変だと感じたのか、彼は不思議そうに尋ねてくる。
「どうしたんだい? って、猫?」
「僕はチェシャ猫だよ」
チェシャ猫、と聞いて、昔聞いた話を思い出す。選ばれたアリスの元には必ずチェシャ猫がやって来る。世界の崩壊の知らせと共に。パニックで、すっかり客が誰なのかを忘れていた。
「最悪の時、チェシャ猫が役目を負うわ。その最悪が、起こらない事を祈っているのだけれど」

