握られた手がほんの少し冷たい。思わず手を強く握り返す。眠りネズミがドアを開けると、チリンチリンと鈴の音が鳴った。店内に入ると目に飛び込んできた服の数々。
「わぁ! 凄い!」
ドレスからスーツ、普段着までありとあらゆる服が揃えられている。でも、驚いたのは服を着たマネキンが、それぞれ自由に動き回っていることだった。服の美しさを強調するように、マネキンの一つがこちらを向いてポーズを取る。不思議と、服の一つ一つがキラキラと輝いて見えた。
「チェシャ猫、大丈夫?」
声をかけるとチェシャ猫から大丈夫、と小さな返事が返ってきた。尻尾を大事そうにさすっているから、尻尾をぶつけたのかもしれない。
「大丈夫? 立てる?」
チェシャ猫に手を差し出すとチェシャ猫が顏を上げ、必然的に目があった。少し驚いたような顏をしている。
「チェシャ猫?」
少しの間驚いた表情でチェシャ猫は私を見上げていたけど、すぐにいつもの優しい表情になる。
「ありがとう。アリス」
差し出した手をチェシャ猫が握る。握ったのは良いものの、チェシャ猫はただ握っただけ。
「えっと、チェシャ猫?」
私があたふたしているうちにチェシャ猫は自分の力で立ち上がった。
「ったく。情けねーなクソネコ」
言い放ちながら、眠りネズミがチェシャ猫のフードを掴んだ。抵抗するチェシャ猫を押さえつけ、フードを狙った。フードは取り外し可能だったようで、眠りネズミは器用にも一瞬でボタンを外す。乱れた髪と黒い猫耳を直すチェシャ猫は、物凄く不機嫌だ。
「毎日寝ているだけのドブネズミに言われたくないよ」
バチバチッと二人の間に火花が飛ぶ。
「何しに来たんだかなー」
私の気持ちを代弁するかのように、二人に言葉が投げかけられる。いつの間に来たのか、近くにエプロン姿の青年が立っていた。
「オイラの店で暴れんなよな」
ここの店員なのだろう。その青年は眠りネズミとチェシャ猫の近くに寄った。
「よぉ。久しぶりじゃねーか。仕立て屋」
「久しぶり」
「珍しいモンだな。犬猿の仲が一緒なんてさ」
「三人は知り合い?」
人目を寄せるオレンジ色の髪。仕立て屋と呼ばれた青年は不意に私の方を向いた。
「はじめましてだな! オイラは仕立て屋。よろしくな、アリス」
仕立て屋はイタズラっぽい笑顔を向けて言った。なんとなくだけど、仕立て屋とは馬が合いそうな気がする。
「うん。こちらこそよろしくね!」
仕立て屋の笑顔につられて思わず頬が緩んだ。
「おい、仕立て屋。今日はこのクソネコの服をどうにかしといてくれ」
「了解。で、代金は?」
「僕は必要以上のお金は持ってないよ」
チェシャ猫はそう言うと眠りネズミの方を見た。
「チッ。じゃあ帽子屋にツケだな」
「へへっ、毎度あり!」
「それはいけないんじゃ」
一瞬眠りネズミが払うかのような感じがしたと思ったら。仕立て屋の顔を見ると何か企んだような黒い顔をしていた。ニシシ、と笑って楽しそうにしている仕立て屋。初めて会ったけど何を考えているか、なんとなく想像がつく。
「仕立て屋。ぼったくろうとか考えちゃダメだからね」
「へへっ。バレたか」
バレたか、と言いながらも仕立て屋は上機嫌だ。後で帽子屋から多目にお金を取る気なのだろう。
「それじゃあチェシャ、オイラがお前に似合うようにかっこよく仕上げてやるぜ!」
「期待しないどくよ。変なことしないでよね。変な仕上がりにしたら眠りネズミのせい、って」
チェシャ猫が眠りネズミの方を振り返った瞬間、眠りネズミの体がグラリと傾く。
「眠りネズミ!」
「わぁ! 凄い!」
ドレスからスーツ、普段着までありとあらゆる服が揃えられている。でも、驚いたのは服を着たマネキンが、それぞれ自由に動き回っていることだった。服の美しさを強調するように、マネキンの一つがこちらを向いてポーズを取る。不思議と、服の一つ一つがキラキラと輝いて見えた。
「チェシャ猫、大丈夫?」
声をかけるとチェシャ猫から大丈夫、と小さな返事が返ってきた。尻尾を大事そうにさすっているから、尻尾をぶつけたのかもしれない。
「大丈夫? 立てる?」
チェシャ猫に手を差し出すとチェシャ猫が顏を上げ、必然的に目があった。少し驚いたような顏をしている。
「チェシャ猫?」
少しの間驚いた表情でチェシャ猫は私を見上げていたけど、すぐにいつもの優しい表情になる。
「ありがとう。アリス」
差し出した手をチェシャ猫が握る。握ったのは良いものの、チェシャ猫はただ握っただけ。
「えっと、チェシャ猫?」
私があたふたしているうちにチェシャ猫は自分の力で立ち上がった。
「ったく。情けねーなクソネコ」
言い放ちながら、眠りネズミがチェシャ猫のフードを掴んだ。抵抗するチェシャ猫を押さえつけ、フードを狙った。フードは取り外し可能だったようで、眠りネズミは器用にも一瞬でボタンを外す。乱れた髪と黒い猫耳を直すチェシャ猫は、物凄く不機嫌だ。
「毎日寝ているだけのドブネズミに言われたくないよ」
バチバチッと二人の間に火花が飛ぶ。
「何しに来たんだかなー」
私の気持ちを代弁するかのように、二人に言葉が投げかけられる。いつの間に来たのか、近くにエプロン姿の青年が立っていた。
「オイラの店で暴れんなよな」
ここの店員なのだろう。その青年は眠りネズミとチェシャ猫の近くに寄った。
「よぉ。久しぶりじゃねーか。仕立て屋」
「久しぶり」
「珍しいモンだな。犬猿の仲が一緒なんてさ」
「三人は知り合い?」
人目を寄せるオレンジ色の髪。仕立て屋と呼ばれた青年は不意に私の方を向いた。
「はじめましてだな! オイラは仕立て屋。よろしくな、アリス」
仕立て屋はイタズラっぽい笑顔を向けて言った。なんとなくだけど、仕立て屋とは馬が合いそうな気がする。
「うん。こちらこそよろしくね!」
仕立て屋の笑顔につられて思わず頬が緩んだ。
「おい、仕立て屋。今日はこのクソネコの服をどうにかしといてくれ」
「了解。で、代金は?」
「僕は必要以上のお金は持ってないよ」
チェシャ猫はそう言うと眠りネズミの方を見た。
「チッ。じゃあ帽子屋にツケだな」
「へへっ、毎度あり!」
「それはいけないんじゃ」
一瞬眠りネズミが払うかのような感じがしたと思ったら。仕立て屋の顔を見ると何か企んだような黒い顔をしていた。ニシシ、と笑って楽しそうにしている仕立て屋。初めて会ったけど何を考えているか、なんとなく想像がつく。
「仕立て屋。ぼったくろうとか考えちゃダメだからね」
「へへっ。バレたか」
バレたか、と言いながらも仕立て屋は上機嫌だ。後で帽子屋から多目にお金を取る気なのだろう。
「それじゃあチェシャ、オイラがお前に似合うようにかっこよく仕上げてやるぜ!」
「期待しないどくよ。変なことしないでよね。変な仕上がりにしたら眠りネズミのせい、って」
チェシャ猫が眠りネズミの方を振り返った瞬間、眠りネズミの体がグラリと傾く。
「眠りネズミ!」

