桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~

 帽子屋のおかげで白ウサギがこの街にいる事がわかったし、黒ウサギの事も知ることが出来た。ウサギに避けられているなんてちょっとショックだったけど、何か理由があるんだよね。うん、そう思いたい。
「じゃあアリスを頼んだぞ」
「ククッ。任せろ。行くぜ」
「案内、頼んだよ。ドブネズミ。無駄な時間をとらせたら耳を千切るからね」
 チェシャ猫が立ち上がり、眠りネズミの前に立つ。火花を散らすと、帽子屋が眠りネズミの肩を叩いた。
「途中で寝たりするなよ」 
「うっせ。早く仕事に行け。この狂った帽子屋」
 そう釘を刺すと帽子屋は部屋を出ていく。
 ぼーっと立っていると、眠りネズミに引き寄せられる。その瞬間、逆の腕を誰かによって引っ張られた。チェシャ猫だ。 
「アリスを導くのは僕だよ。そこは譲れない」
 眠りネズミを睨むチェシャ猫。そうだ、この二人に挟まれて街を歩かなきゃいけないんだ。考えてみれば、犬猿、といっても猫とネズミなんだけど、仲の悪い二人の間を、私が取り持たなきゃいけないんだ。
「離せ、クソ猫お前の役割なんてしるかよ」
「ふ、二人が親切に私を案内してくれる気持ちは嬉しいよ。でも、喧嘩はダメだよ」
「ごめんよ」
「アリスがそう言うのならそうするぜ。まぁ、案内の時だけだけどな」
 眠りネズミが諦めたように掴んでいた私の腕を離す。それと同時にチェシャ猫も私の腕を離した。
「ん? どうしたんだい?」
 思わずチェシャ猫の服の袖を引っ張ってしまったらしい。チェシャ猫が手を握っていてくれるのに馴れすぎて、握っていてくれるのが当然のように思っていた。
「な、なんでもないよ!」
 誤魔化すように手をぶんぶんと振ってみる。幸いチェシャ猫はそのことに気づいてないようで、首を傾けている。
「そろそろ出発するぜ。日が暮れる」
「う、うん」
 動揺している場合じゃないよね。
 眠りネズミの後に続き、私達はウサギの部屋を出た。