帽子屋の方を見ると、眠りネズミの背中とチェシャ猫が薔薇と戦っている姿がある。眠りネズミが銃で蔦を切り続けても、帽子屋が操る薔薇はどんどんスピードを増して二人を攻撃する。
「くっ」
チェシャ猫はギリギリのところで薔薇を躱し、長い爪で蔦を切り裂いた。
「クソ猫! 帽子屋の左を狙え!」
蔦の攻撃を避けながら、眠りネズミがチェシャ猫に向かって叫ぶ。
「無茶言うよ!」
その指示通り、チェシャ猫は帽子屋の左横の蔦を切り裂いていく。
「今だよ! 眠りネズミ!」
その言葉を合図に、眠りネズミが帽子屋に向かって走りだす。一部分だけ蔦が無くなり無防備になった帽子屋に一瞬で近づくと、眠りネズミは帽子屋の頬を思いっきり殴った。殴られた帽子屋は、後ろへと倒れていく。帽子屋が床に倒れると同時に、チェシャ猫達を攻撃した薔薇は消えていった。帽子屋からも館からも、嫌な感じが少しずつ薄れていく。
「帽子屋!」
考えるよりも先に足が動き、体は帽子屋の元へと向かう。
「アリス、まだこっちに来たら危ないよ」
チェシャ猫の制止を聞きながらも、駆け出さずにはいられなかった。
「アリ、ス……」
帽子屋の元に着くと、彼はゆっくりと起き上がり始める。
もう先程のように狂気に捕らわれている様子はなかった。
「アリス、すまない」
帽子屋は私を一瞥すると、瞳を伏せた。
「帽子屋は悪くないよ」
帽子屋は悪くない。悪いのは魔女。呪いのせいなのに。責任を感じているのか、帽子屋は辛そうに唇を噛む。
「気にしないで。元気だして」
気にするのは私の方だ。帽子屋を狂気から救えなかった。私は、何も出来なかった。ただ、チェシャ猫達に守られていただけ。
瞳は伏せたままの帽子屋に次の言葉を紡ぐ刹那、帽子屋の帽子がぐしゃりと拳で潰された。
「眠りネズミ!」
帽子屋のシルクハットを潰した張本人と帽子屋を交互に見つめる。帽子屋は何が起こったのかわからず、驚いた顔を眠りネズミへと向ける。
「アリスが元気だせっつってんのに、いつまでウジウジしてんだてめえは。いい加減にしやがれ」
潰されたシルクハットに触れる帽子屋を無言で見つめる。
シルクハットが潰された事を理解したであろう帽子屋は、先程とは違う殺気を纏いはじめている。流石の眠りネズミも、その表情にはまずい、と書いてあった。
「あの、帽子屋……?」
恐る恐る声をかけても、帽子屋は小刻みに体を震わせて返事をしない。多分、返事どころじゃないくらい怒っている。女王様以外の大人の男の人が怒る姿を初めて見た。
「アリス。行こう」
「いいの? 帽子屋はもう大丈夫?」
「うん。もう平気だから。それよりも早く此処を出ないと、巻き添えをくらうよ。帽子を潰された帽子屋は怖いんだ。ここは怒らせた眠りネズミに任せよう」
私を立たせてくれながらチェシャ猫が話す。
チェシャ猫に手を引かれながら、部屋を出て小さな光でいっぱいの廊下を歩く。 数えきれないくらいの小さな光は、ふわふわと浮遊し廊下を照らしてくれていた。
「これは?」
「ランプの光だよ」
ランプの光を見つめながら、少しだけ繋いだ手を強める。
その後、帽子屋の怒鳴り声が聞こえるまで、時間はかからなかった。
「くっ」
チェシャ猫はギリギリのところで薔薇を躱し、長い爪で蔦を切り裂いた。
「クソ猫! 帽子屋の左を狙え!」
蔦の攻撃を避けながら、眠りネズミがチェシャ猫に向かって叫ぶ。
「無茶言うよ!」
その指示通り、チェシャ猫は帽子屋の左横の蔦を切り裂いていく。
「今だよ! 眠りネズミ!」
その言葉を合図に、眠りネズミが帽子屋に向かって走りだす。一部分だけ蔦が無くなり無防備になった帽子屋に一瞬で近づくと、眠りネズミは帽子屋の頬を思いっきり殴った。殴られた帽子屋は、後ろへと倒れていく。帽子屋が床に倒れると同時に、チェシャ猫達を攻撃した薔薇は消えていった。帽子屋からも館からも、嫌な感じが少しずつ薄れていく。
「帽子屋!」
考えるよりも先に足が動き、体は帽子屋の元へと向かう。
「アリス、まだこっちに来たら危ないよ」
チェシャ猫の制止を聞きながらも、駆け出さずにはいられなかった。
「アリ、ス……」
帽子屋の元に着くと、彼はゆっくりと起き上がり始める。
もう先程のように狂気に捕らわれている様子はなかった。
「アリス、すまない」
帽子屋は私を一瞥すると、瞳を伏せた。
「帽子屋は悪くないよ」
帽子屋は悪くない。悪いのは魔女。呪いのせいなのに。責任を感じているのか、帽子屋は辛そうに唇を噛む。
「気にしないで。元気だして」
気にするのは私の方だ。帽子屋を狂気から救えなかった。私は、何も出来なかった。ただ、チェシャ猫達に守られていただけ。
瞳は伏せたままの帽子屋に次の言葉を紡ぐ刹那、帽子屋の帽子がぐしゃりと拳で潰された。
「眠りネズミ!」
帽子屋のシルクハットを潰した張本人と帽子屋を交互に見つめる。帽子屋は何が起こったのかわからず、驚いた顔を眠りネズミへと向ける。
「アリスが元気だせっつってんのに、いつまでウジウジしてんだてめえは。いい加減にしやがれ」
潰されたシルクハットに触れる帽子屋を無言で見つめる。
シルクハットが潰された事を理解したであろう帽子屋は、先程とは違う殺気を纏いはじめている。流石の眠りネズミも、その表情にはまずい、と書いてあった。
「あの、帽子屋……?」
恐る恐る声をかけても、帽子屋は小刻みに体を震わせて返事をしない。多分、返事どころじゃないくらい怒っている。女王様以外の大人の男の人が怒る姿を初めて見た。
「アリス。行こう」
「いいの? 帽子屋はもう大丈夫?」
「うん。もう平気だから。それよりも早く此処を出ないと、巻き添えをくらうよ。帽子を潰された帽子屋は怖いんだ。ここは怒らせた眠りネズミに任せよう」
私を立たせてくれながらチェシャ猫が話す。
チェシャ猫に手を引かれながら、部屋を出て小さな光でいっぱいの廊下を歩く。 数えきれないくらいの小さな光は、ふわふわと浮遊し廊下を照らしてくれていた。
「これは?」
「ランプの光だよ」
ランプの光を見つめながら、少しだけ繋いだ手を強める。
その後、帽子屋の怒鳴り声が聞こえるまで、時間はかからなかった。

