「あぁ、遅くなってすまない。いや、間に合わなくてすまなかった。俺が一週間等と言わず、あの時君を拐っていれば、君はこんな目に合わずにすんだ。君にどう謝ろうと許されるものではないだろう」
「そう、そうだ。今更、今更遅い。何もかも遅い。妾の憎しみはいまだもって燃え盛っている。世界を崩壊させるまで、人を消し尽くすまで、妾の憎しみは昇華されない、アーサー、妾は憎い、私を殺した世界が、アーサー、貴方との未来を、貴方の未来を奪った世界が憎い。憎い、憎い、憎い」
アーサーの腕の中で、エレノアが泣きじゃくる。
「あぁ、憎いな、俺も憎い。何度世界を滅ぼそうかと思ったか。何度後悔したか。君に会えないダイヤの城で、何度君を想ったか」
ぽろり、とアーサーの瞳から涙が溢れ、エレノアの肌に落ちる。エレノアは青い瞳を涙で濡らしながら空虚を見ていた。
「憎い、憎い、憎い。何もかも、壊したりない」
「そうだな、憎い。君が望むなら俺も世界を壊そう。君が望むなら死の山を築こう。今度こそ君と共にあろう。だが壊す前に、俺の望みを聞いてはくれないか。エレノア、俺には本来君に何かを望める権利なんてない。けれどエレノア、俺は君との夢物語を綴りたい。エレノア」
アーサーは抱いたままのエレノアの頭に、唇を落とした。何度も、何度も、会えなかった分、愛しく想った分、途切れることなくエレノアを愛し続ける。
もし大衆が1日でも、数時間でも遅くエレノアを殺す計画をしていれば。もしアーサーがあの時エレノアを拐っていれば。もし魔女だと疑いがなければ。エレノアがアーサーを追いかけていれば。そんな事を考えても仕方ないのに、思わずにはいられなかった。
これは運命であり、選択の結果。
「エレノア、エレノア、エレノア」
名前を呼び続けても、エレノアは空虚を見つめるばかりで、アーサーの願いは届かない。
邪魔をしてはいけないと思うけど、私は二人に近付いた。意思をなくしたかのようにぶらりと下がるエレノアの手をとる。
「エレノア、運命は変えられない。不思議の国の呪いやアリス達の悲しみをなくすことは出来ない。でも、この悪夢は終わらせることが出来る。アーサーの声を聞いて。私の声を聞いて。この悪夢から一緒に出よう」
エレノアはゆっくりと視線を私に向ける。透き通る肌は血が通わない人形のようで、意思を取り戻せるのか不安で肩に力が入る。でも、諦めるわけにはいかない。諦めたくない。
「女王様、一緒に帰ろう。物語はここで終わらない。ずっと続いていくよ」
喉に痛みが走る。突然のことに、体が反応出来なかった。瞑ってしまった目を開けると、エレノアの腕が私の首を絞めているのが見えた。肢体があまりにも白く、私を覗きこむその瞳が闇へと誘うような紅で、背筋に電気が走る。本能が闇を恐れ、体への侵食を拒否するかのように体温が上がる。
今度はもう力で私を殺しに来ている。
「エレノア! やめろ!」
「言っただろう、全てが憎いのだと。アリス、この憎しみこの怨みは容易に晴らせるものではない。憎い、憎い、憎い。お前がどう足掻こうと無駄だ。手始めにお前の命を壊す。そしてお前の家族を壊す。世界を壊す。全て全て全て! 崩壊させるのだ!」
「貴女の、憎しみは消せない。どんなに命を奪っても、世界を壊しても!」
「分からぬではないか。壊し尽くした世界の果てで、ようやく妾は満足出来るかもしれないだろう」
その言葉に、私はカチンときてしまった。
「そう、そうだ。今更、今更遅い。何もかも遅い。妾の憎しみはいまだもって燃え盛っている。世界を崩壊させるまで、人を消し尽くすまで、妾の憎しみは昇華されない、アーサー、妾は憎い、私を殺した世界が、アーサー、貴方との未来を、貴方の未来を奪った世界が憎い。憎い、憎い、憎い」
アーサーの腕の中で、エレノアが泣きじゃくる。
「あぁ、憎いな、俺も憎い。何度世界を滅ぼそうかと思ったか。何度後悔したか。君に会えないダイヤの城で、何度君を想ったか」
ぽろり、とアーサーの瞳から涙が溢れ、エレノアの肌に落ちる。エレノアは青い瞳を涙で濡らしながら空虚を見ていた。
「憎い、憎い、憎い。何もかも、壊したりない」
「そうだな、憎い。君が望むなら俺も世界を壊そう。君が望むなら死の山を築こう。今度こそ君と共にあろう。だが壊す前に、俺の望みを聞いてはくれないか。エレノア、俺には本来君に何かを望める権利なんてない。けれどエレノア、俺は君との夢物語を綴りたい。エレノア」
アーサーは抱いたままのエレノアの頭に、唇を落とした。何度も、何度も、会えなかった分、愛しく想った分、途切れることなくエレノアを愛し続ける。
もし大衆が1日でも、数時間でも遅くエレノアを殺す計画をしていれば。もしアーサーがあの時エレノアを拐っていれば。もし魔女だと疑いがなければ。エレノアがアーサーを追いかけていれば。そんな事を考えても仕方ないのに、思わずにはいられなかった。
これは運命であり、選択の結果。
「エレノア、エレノア、エレノア」
名前を呼び続けても、エレノアは空虚を見つめるばかりで、アーサーの願いは届かない。
邪魔をしてはいけないと思うけど、私は二人に近付いた。意思をなくしたかのようにぶらりと下がるエレノアの手をとる。
「エレノア、運命は変えられない。不思議の国の呪いやアリス達の悲しみをなくすことは出来ない。でも、この悪夢は終わらせることが出来る。アーサーの声を聞いて。私の声を聞いて。この悪夢から一緒に出よう」
エレノアはゆっくりと視線を私に向ける。透き通る肌は血が通わない人形のようで、意思を取り戻せるのか不安で肩に力が入る。でも、諦めるわけにはいかない。諦めたくない。
「女王様、一緒に帰ろう。物語はここで終わらない。ずっと続いていくよ」
喉に痛みが走る。突然のことに、体が反応出来なかった。瞑ってしまった目を開けると、エレノアの腕が私の首を絞めているのが見えた。肢体があまりにも白く、私を覗きこむその瞳が闇へと誘うような紅で、背筋に電気が走る。本能が闇を恐れ、体への侵食を拒否するかのように体温が上がる。
今度はもう力で私を殺しに来ている。
「エレノア! やめろ!」
「言っただろう、全てが憎いのだと。アリス、この憎しみこの怨みは容易に晴らせるものではない。憎い、憎い、憎い。お前がどう足掻こうと無駄だ。手始めにお前の命を壊す。そしてお前の家族を壊す。世界を壊す。全て全て全て! 崩壊させるのだ!」
「貴女の、憎しみは消せない。どんなに命を奪っても、世界を壊しても!」
「分からぬではないか。壊し尽くした世界の果てで、ようやく妾は満足出来るかもしれないだろう」
その言葉に、私はカチンときてしまった。

