青い薔薇を飛び越えて、館の敷地から飛び出す。飛んだ衝撃で、思わず舌を噛みそうになった。
「しっかり捕まっていて、アリス!」
「うん!」
言われるがまま、振り落とされないようチェシャ猫の首に腕を回す。柵の向こうは、チェシャ猫の言っていた通り、魔物が街を飲み込むように破壊していく。そして魔物を食い止めようと、大勢のトランプ兵が剣で対抗していた。
トランプ兵の中で応戦する帽子屋と眠りネズミを見つけて、思わず声をあげそうになった。二人の背中の後ろには、三月ウサギがいる。
「良かった、会えたんだね!」
感動の再会はないものの、負傷した三月ウサギを庇うかのように、ステッキでトランプ兵を一掃する帽子屋と、蹴りで倒していく眠りネズミ。三人共私達に気付いたみたいだったけど、言葉はなかった。かわりに、強い眼差しが、行け、と伝えてくる。
「黒ウサギメはどこ」
一度地面に着地すると、近くで銃声が鳴り響く。世界が崩壊する音の中でもしっかりと聞こえた銃声は、黒ウサギの位置を教えている。
「チェシャ猫、あっち!」
建物の一つ向こう、チェシャ猫も分かっていただろうけど、言わずにはいられなかった。チェシャ猫は地面を蹴ると、再び空中を跳ぶ。
そのまま行ける、そう思ったのもつかの間、チェシャ猫が振り向き、体制が大きく揺らいだ。長くなったチェシャ猫の爪が、鋭い剣先を捉えている。
「スペードのエース!」
剣の持ち主を見て、戦慄が走る。青い隊服に、青い髪。視線だけで人を射殺せそうな鋭い目付き。暗黒の魔女に出会う前、追ってきたスペードのエースだ。
「もう逃がさんぞ」
切羽詰まっているのか、以前にも増して殺意が見える。地面に降りるしかなくなった私達は、トランプ兵のいる中に飛び込む。私を捕まえようと伸びる手から、チェシャ猫が遮る。けれど、チェシャ猫が私を守れたのは一時で、スペードのエースからの二撃目を防ぐために、密着していた身体が離れた。
「くっ」
「チェシャ猫!」
トランプ兵がその隙を見逃すはずがなく、腕を強く掴まれ拘束された。
女王様の命令は、きっとまだ行きとどいてない。私たちは、まだ捕獲対象のままなんだ。
「嫌! 離して! 黒ウサギのところに行かなくちゃならないの!」
説明したいのに、説明している時間がない。話を聞いてもらうには、時間がなさすぎる。
「よくやった! アリスをこちらに渡せ! オイラが捕まえておく!」
「あぁ、頼む」
「離してってばっ!」
身体中の力を込めて抵抗するけど、兵士の力には敵わない。スペードの兵士は、更に拘束する気なのか、縄を持った兵士に私をつきだす。
チェシャ猫はスペードのエースと戦っている。帽子屋達も応戦中だし、誰にも助けを呼べない。縄なんかで縛られたら、私一人じゃ本当に何も出来なくなるのに!
声を上げ嫌がっても、身体に縄が回される。締め付けないように配慮はあるけれど、連行しやすいように縛られ、ぐいっと引っ張られた。
「離して! どこに連れてくの!」
「どこにって、黒ウサギのとこだっつーの。呪い、解くんだろー? ほら、どいたどいたー!」
他の兵士を散らして、黒ウサギの方へ向かう。その様子に、どこか違和感を覚えた。このテンションと声、それに帽子からはみ出すオレンジの髪は。
私を連行する兵士は、振り向くと帽子の鍔をくいっとあげる。丸く琥珀の瞳が私を見るとニッと笑い、悪戯っぽく微笑んだ。この笑顔には見覚えがある。とんでもない強引さも、忘れるはずかない。
「し、仕立て屋!」
「ほら、行くぞ!」
「しっかり捕まっていて、アリス!」
「うん!」
言われるがまま、振り落とされないようチェシャ猫の首に腕を回す。柵の向こうは、チェシャ猫の言っていた通り、魔物が街を飲み込むように破壊していく。そして魔物を食い止めようと、大勢のトランプ兵が剣で対抗していた。
トランプ兵の中で応戦する帽子屋と眠りネズミを見つけて、思わず声をあげそうになった。二人の背中の後ろには、三月ウサギがいる。
「良かった、会えたんだね!」
感動の再会はないものの、負傷した三月ウサギを庇うかのように、ステッキでトランプ兵を一掃する帽子屋と、蹴りで倒していく眠りネズミ。三人共私達に気付いたみたいだったけど、言葉はなかった。かわりに、強い眼差しが、行け、と伝えてくる。
「黒ウサギメはどこ」
一度地面に着地すると、近くで銃声が鳴り響く。世界が崩壊する音の中でもしっかりと聞こえた銃声は、黒ウサギの位置を教えている。
「チェシャ猫、あっち!」
建物の一つ向こう、チェシャ猫も分かっていただろうけど、言わずにはいられなかった。チェシャ猫は地面を蹴ると、再び空中を跳ぶ。
そのまま行ける、そう思ったのもつかの間、チェシャ猫が振り向き、体制が大きく揺らいだ。長くなったチェシャ猫の爪が、鋭い剣先を捉えている。
「スペードのエース!」
剣の持ち主を見て、戦慄が走る。青い隊服に、青い髪。視線だけで人を射殺せそうな鋭い目付き。暗黒の魔女に出会う前、追ってきたスペードのエースだ。
「もう逃がさんぞ」
切羽詰まっているのか、以前にも増して殺意が見える。地面に降りるしかなくなった私達は、トランプ兵のいる中に飛び込む。私を捕まえようと伸びる手から、チェシャ猫が遮る。けれど、チェシャ猫が私を守れたのは一時で、スペードのエースからの二撃目を防ぐために、密着していた身体が離れた。
「くっ」
「チェシャ猫!」
トランプ兵がその隙を見逃すはずがなく、腕を強く掴まれ拘束された。
女王様の命令は、きっとまだ行きとどいてない。私たちは、まだ捕獲対象のままなんだ。
「嫌! 離して! 黒ウサギのところに行かなくちゃならないの!」
説明したいのに、説明している時間がない。話を聞いてもらうには、時間がなさすぎる。
「よくやった! アリスをこちらに渡せ! オイラが捕まえておく!」
「あぁ、頼む」
「離してってばっ!」
身体中の力を込めて抵抗するけど、兵士の力には敵わない。スペードの兵士は、更に拘束する気なのか、縄を持った兵士に私をつきだす。
チェシャ猫はスペードのエースと戦っている。帽子屋達も応戦中だし、誰にも助けを呼べない。縄なんかで縛られたら、私一人じゃ本当に何も出来なくなるのに!
声を上げ嫌がっても、身体に縄が回される。締め付けないように配慮はあるけれど、連行しやすいように縛られ、ぐいっと引っ張られた。
「離して! どこに連れてくの!」
「どこにって、黒ウサギのとこだっつーの。呪い、解くんだろー? ほら、どいたどいたー!」
他の兵士を散らして、黒ウサギの方へ向かう。その様子に、どこか違和感を覚えた。このテンションと声、それに帽子からはみ出すオレンジの髪は。
私を連行する兵士は、振り向くと帽子の鍔をくいっとあげる。丸く琥珀の瞳が私を見るとニッと笑い、悪戯っぽく微笑んだ。この笑顔には見覚えがある。とんでもない強引さも、忘れるはずかない。
「し、仕立て屋!」
「ほら、行くぞ!」

