「チェシャ猫、そろそろ行きなさい」
女王様が制した瞬間、どこからか優しいメロディーが流れる。発生源は私の手の中だ。懐中時計から流れている。
「女王様、これ」
女王様も驚いているようで、目を見開き時計を見つめる。
「私が持っていた時は、一度も鳴らなかったのに」
それが合図のように、チェシャ猫が私に手を差し出した。
「行こう、出発の時間だよ」
女王様とリズを見ると、二人とも静かに頷いた。女王様は最後まで悲しそうな表情だったけれど、リズは不安そうにしながらも笑顔でいてくれた。
「行きなさい、アリス」
「いってらっしゃい、どうか無事で」
チェシャ猫を見るとチェシャ猫はもう一度行こう、と呟いた。
「僕と一緒に探すんだ」
チェシャ猫の手を強く握る。チェシャ猫はそれを確かめると、私を連れて歩きだした。思わず振り向いた先に、女王様とリズがこちらを見守っていた。その姿をしっかりと目に焼き付ける。まだ世界が崩壊している実感なんて湧かない。この城を離れる事さえ嘘みたい。でも、この先必ず世界の崩壊の片鱗を見る日が来る。帰って来られないかもしれない。もう二度と会えないかもしれない。
「アリス、大丈夫だよ」
私の不安を掻き消すように、優しい言葉が降ってくる。握った手の暖かさが、強さが私に知らせてくる。そうだ、私にはチェシャ猫がいる。
「君は必ず此処に帰って来る。だからほら、言うことがあるだろう? 君が言わないとお帰りが言えないよ?」
「そうだよね。女王様、リズ、いってきます!」
大きな声をだすと、なんだか少しだけ肩の力が抜けて、勇気が湧いてくる。
不安はまだ拭えないけれど、帰って来られないかもしれないなんて考えは吹き飛んだ。
「目を閉じて。アリス」
チェシャ猫が私を抱えると、ウサギの穴へと身体を向けた。
い、嫌な予感がする!
「え! ちょっ、チェシャ猫!?」
「しっかり掴まっているんだよ」
「きゃぁぁぁ――――!」
予感通り、チェシャ猫は穴に飛び込んだ。下へ、下へ。私達は勢いよく穴に落ちていく。時計はまだ鳴ったまま。私達の意識を見送るように、時計は穴の中で静かに音楽を奏でた。
女王様が制した瞬間、どこからか優しいメロディーが流れる。発生源は私の手の中だ。懐中時計から流れている。
「女王様、これ」
女王様も驚いているようで、目を見開き時計を見つめる。
「私が持っていた時は、一度も鳴らなかったのに」
それが合図のように、チェシャ猫が私に手を差し出した。
「行こう、出発の時間だよ」
女王様とリズを見ると、二人とも静かに頷いた。女王様は最後まで悲しそうな表情だったけれど、リズは不安そうにしながらも笑顔でいてくれた。
「行きなさい、アリス」
「いってらっしゃい、どうか無事で」
チェシャ猫を見るとチェシャ猫はもう一度行こう、と呟いた。
「僕と一緒に探すんだ」
チェシャ猫の手を強く握る。チェシャ猫はそれを確かめると、私を連れて歩きだした。思わず振り向いた先に、女王様とリズがこちらを見守っていた。その姿をしっかりと目に焼き付ける。まだ世界が崩壊している実感なんて湧かない。この城を離れる事さえ嘘みたい。でも、この先必ず世界の崩壊の片鱗を見る日が来る。帰って来られないかもしれない。もう二度と会えないかもしれない。
「アリス、大丈夫だよ」
私の不安を掻き消すように、優しい言葉が降ってくる。握った手の暖かさが、強さが私に知らせてくる。そうだ、私にはチェシャ猫がいる。
「君は必ず此処に帰って来る。だからほら、言うことがあるだろう? 君が言わないとお帰りが言えないよ?」
「そうだよね。女王様、リズ、いってきます!」
大きな声をだすと、なんだか少しだけ肩の力が抜けて、勇気が湧いてくる。
不安はまだ拭えないけれど、帰って来られないかもしれないなんて考えは吹き飛んだ。
「目を閉じて。アリス」
チェシャ猫が私を抱えると、ウサギの穴へと身体を向けた。
い、嫌な予感がする!
「え! ちょっ、チェシャ猫!?」
「しっかり掴まっているんだよ」
「きゃぁぁぁ――――!」
予感通り、チェシャ猫は穴に飛び込んだ。下へ、下へ。私達は勢いよく穴に落ちていく。時計はまだ鳴ったまま。私達の意識を見送るように、時計は穴の中で静かに音楽を奏でた。

