桃色のアリス ~暗黒の魔女とアリスの想い~

 剣の装飾は金が入っていて、他にも城で見たようなカラフルな宝石が散りばめられるようについている。ダイヤの王子様みたいに威圧感はないけど、下げられた高そうな剣と良い、綺麗な金髪に整った顔は童話の王子様みたいだった。
 じっと見つめられていたのが恥ずかしかったのか、男の子は恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「あ、アリスって、もしかしてダイナの主の?」
 男の子の口から出てきたのは、予想もしなかった言葉。
 首に巻かれたピンク色のリボン。前と後ろの二つのリボンと鈴が特徴的な、銀色の髪の女の子。アリスの飼い猫の、ダイナ。
「ダイナを知っているの?」
「あー! やっぱりダイナの仕業かぁ。困ったなぁ」
「ダイナの仕業?」
 金髪の男の子は、困ったなー、と言いながら頭をかく。私は意味が分からなくて、頭の中はクエスチョンだらけ。 ダイナについては何も知らない私は、首を傾けるしかない。だって前会った時はいきなり現れて、いきなり消えてしまった。どこに消えたのかも、全く分からない。
「あれ? ダイナから聞いてない? ダイナ、僕が寝ている間に身体を借りてよく悪戯するんだ」
「ダイナが、えっと」
「ハンプティ」
 私が名前を呼べなくてどもると、男の子はを口走る。
「ハンプティ・ダンプティ。それが僕の名前だよ」
 ふわり、と笑うハンプティ・ダンプティ。その笑顔は見ているこちらを癒すような、花が咲いたみたいな笑顔。回りの花いっぱいの景色が、ハンプティの笑顔をより魅力的に見せている。疑問に思うことがいっぱいで気付かなかったけど、此処はダイヤの城の庭のようだ。
 周りに広がるのは、女王様の城と似たような作りの庭。けれどこの庭の花は黄色い花や小さな花が植えられていて、どちらかと言うと可愛らしい。
「よろしくアリス。アリスのことは夢の中でダイナに聞いているよ! 最も、ピンク色のアリスについては最近聞いたばかりなんだけど」
「よろしくね、ハンプティ! 多分それはつい最近ダイナに会ったからだと思うよ。ダイナは元気?」
「うん、元気だよ!」
 笑顔で返してくれるハンプティ。最近は緊張感のある会話ばかりで肩に力が入っていたせいか、ハンプティとの会話にどんどんと緊張感が解けていく。庭の空気も新鮮に思えて、息を吸う度心も落ち着いていく。鼻を擽る甘い花の香り。美味しい空気。こういうの、癒されている感じがする。
 ダイナも別に悪戯したわけじゃなくて、疲れた私を気遣ってハンプティに会わせてくれたのかも。ハンプティといると、ほっとする。
「もう、ダイナには困ったなぁ。後でしっかり言っておくね」
「ハンプティ、ダイナを怒らないであげて」
 ハンプティがきょとんとする。丸い目が、パチパチと数度瞬きを繰り返した。
「ダイナもきっと悪気はなかったと思うの。きっと私の為に、ハンプティに会わせてくれたと思うのから」
「アリスの為に?」
「うん!」
 ハンプティはまた瞬きを数度繰り返す。きょとんとするハンプティからは、先程の私と同じように頭の中が謎でいっぱいなのが分かる。そんなハンプティに現状についての説明は難しいけど、私が感じたことは伝えたい。
「上手く伝えられるか分からないけど、聞いてくれる?」
 自信がなくて、おずおずと切り出してしまう。ハンプティを見ると、きょとんとした表情はみるみる柔らかくなって、そんな私の心配を跳ね返してくれる。
「うん、聞かせて。君の話」
 ふわり、と優しく笑ってくれたハンプティ。ハンプティの笑顔の魔法なのか、胸にある言葉を全部言ってしまいたい。