時計屋さん、王子様、ディーとダム。
「待って、展開が早くてついていけません。頭が今度こそショートしそう!」
目を回している私に構わず、王子様は続ける。何が面白いのか、とても楽しそうだ。仕立て屋が悪巧みをする時の、怪しい笑顔。
もう嫌な予感しかしない。でも、反対に希望に満ち溢れていてワクワクするようで。
今までの歴史の中に、呪いを解く鍵があるとするなら。私はそれを学ぶ必要がある。
私は王子様の言う通り、無知だ。ろくに知らないまま旅をして、分からないまま此処に来てしまった。歴代のアリスと同じ結末を繰り返さない為にも、その歴史とアリス達が残したものを、私が学んで受け継がなければいけない。
王子様は自慢気に、ニヤリと笑う。心臓がドキドキと脈打つ。今度は不安じゃない、期待に高鳴る鼓動。
白ウサギ、私、約束を守れそう。ううん、守るよ。
黒ウサギ、世界の崩壊は止まる。止めるから、待っていて。
王子様は、王様に戻ったかのように私に言った。
「ウサギの時計を止め、世界を覆せ」
常識なんて覆す。王子様が口に出さずともその意図は伝わってきた。
ウサギの時計を同時に止める。二人を消させたりしない。それはきっと今までやったことのないこと。前例がない分、賭けにも等しいはず。けれど、もう進むしかない。不安はあるけれど、私が意思をしっかり持っていれば大丈夫。
拳をぎゅっと握りしめて自分に大丈夫だと言い聞かせる。
「ディー、ダム。お遊びは程々にして、アリス様をチェシャ猫の元へお連れしてください。彼女も、疲れているでしょうから」
ディーとダムから距離をとりつつも時計屋さんを見ると、時計屋さんは僅かに微笑んでいた。緊張が緩んだのか、私も笑顔になる。
「じゃあ、お言葉に甘えて、お願いします」
ディーとダムはニコリと微笑むと、目にも止まらぬ早業で私の腕を掴む。がっしりと両方の腕を捕まれた私は、またもや逃げられない。連行されていくようで、振り出しに戻った気さえした。
「それじゃあ」
「僕らもお言葉に甘えて」
「「ショーを披露してあげる。ごゆっくりどうぞ? お客様」」
「え? チェシャ猫のとこに連れていってくれるんだよね?」
「ディー、ダム。離しなさい」
時計屋さんの一言で、二人は私の拘束を解く。おかげでディーとダムのマジックショーを逃れることが出来た私は、チェシャ猫の休む部屋に向けて、逃げるように足を早めた。
ダイヤの城はどこも豪華で、客室であろう部屋の扉も、ダイヤの形をした宝石がはめ込まれていた。廊下も壁も眩しいくらい輝いていて、女王様の赤色に慣れている私は、慣れずに足を進める。
案内された部屋の前に立つと、ディーとダムは武器の調達をするからと姿を消した。戸惑いつつも金色のドアノブを回す。扉を開けて見えたのは、赤と黄色の家具が目立つ、広い部屋。その中央に置かれた大きなベッドには、チェシャ猫が眠っている。チェシャ猫は目を覚まさず、ピクリともしない。部屋に響くのは、微かな寝息だけ。
「チェシャ猫」
ベッドで眠るチェシャ猫に近付き、まだ汗ばんだ顔を、近くに置いてあったタオルで拭う。もう顔色は大分よくなっている。
「良かった」
思い出す、チェシャ猫が守ってくれた時のこと。
大きな爆発音で放たれた大砲。森一面に降り注いだ光の粒。逃げなきゃ、と言い終える前に真っ暗になった視界。 いつも身を挺して庇ってくれるチェシャ猫。私だってチェシャ猫を守りたいのに、いつも守り切れなくて。 暗黒の魔女との戦いでだって、どれほどチェシャ猫を傷付けたか。
「ごめんね」
「待って、展開が早くてついていけません。頭が今度こそショートしそう!」
目を回している私に構わず、王子様は続ける。何が面白いのか、とても楽しそうだ。仕立て屋が悪巧みをする時の、怪しい笑顔。
もう嫌な予感しかしない。でも、反対に希望に満ち溢れていてワクワクするようで。
今までの歴史の中に、呪いを解く鍵があるとするなら。私はそれを学ぶ必要がある。
私は王子様の言う通り、無知だ。ろくに知らないまま旅をして、分からないまま此処に来てしまった。歴代のアリスと同じ結末を繰り返さない為にも、その歴史とアリス達が残したものを、私が学んで受け継がなければいけない。
王子様は自慢気に、ニヤリと笑う。心臓がドキドキと脈打つ。今度は不安じゃない、期待に高鳴る鼓動。
白ウサギ、私、約束を守れそう。ううん、守るよ。
黒ウサギ、世界の崩壊は止まる。止めるから、待っていて。
王子様は、王様に戻ったかのように私に言った。
「ウサギの時計を止め、世界を覆せ」
常識なんて覆す。王子様が口に出さずともその意図は伝わってきた。
ウサギの時計を同時に止める。二人を消させたりしない。それはきっと今までやったことのないこと。前例がない分、賭けにも等しいはず。けれど、もう進むしかない。不安はあるけれど、私が意思をしっかり持っていれば大丈夫。
拳をぎゅっと握りしめて自分に大丈夫だと言い聞かせる。
「ディー、ダム。お遊びは程々にして、アリス様をチェシャ猫の元へお連れしてください。彼女も、疲れているでしょうから」
ディーとダムから距離をとりつつも時計屋さんを見ると、時計屋さんは僅かに微笑んでいた。緊張が緩んだのか、私も笑顔になる。
「じゃあ、お言葉に甘えて、お願いします」
ディーとダムはニコリと微笑むと、目にも止まらぬ早業で私の腕を掴む。がっしりと両方の腕を捕まれた私は、またもや逃げられない。連行されていくようで、振り出しに戻った気さえした。
「それじゃあ」
「僕らもお言葉に甘えて」
「「ショーを披露してあげる。ごゆっくりどうぞ? お客様」」
「え? チェシャ猫のとこに連れていってくれるんだよね?」
「ディー、ダム。離しなさい」
時計屋さんの一言で、二人は私の拘束を解く。おかげでディーとダムのマジックショーを逃れることが出来た私は、チェシャ猫の休む部屋に向けて、逃げるように足を早めた。
ダイヤの城はどこも豪華で、客室であろう部屋の扉も、ダイヤの形をした宝石がはめ込まれていた。廊下も壁も眩しいくらい輝いていて、女王様の赤色に慣れている私は、慣れずに足を進める。
案内された部屋の前に立つと、ディーとダムは武器の調達をするからと姿を消した。戸惑いつつも金色のドアノブを回す。扉を開けて見えたのは、赤と黄色の家具が目立つ、広い部屋。その中央に置かれた大きなベッドには、チェシャ猫が眠っている。チェシャ猫は目を覚まさず、ピクリともしない。部屋に響くのは、微かな寝息だけ。
「チェシャ猫」
ベッドで眠るチェシャ猫に近付き、まだ汗ばんだ顔を、近くに置いてあったタオルで拭う。もう顔色は大分よくなっている。
「良かった」
思い出す、チェシャ猫が守ってくれた時のこと。
大きな爆発音で放たれた大砲。森一面に降り注いだ光の粒。逃げなきゃ、と言い終える前に真っ暗になった視界。 いつも身を挺して庇ってくれるチェシャ猫。私だってチェシャ猫を守りたいのに、いつも守り切れなくて。 暗黒の魔女との戦いでだって、どれほどチェシャ猫を傷付けたか。
「ごめんね」

