「分かっています。犠牲無しで世界は救えないこと。世界の崩壊も、呪いも全て解くのがどれ程欲深いことか。どれ程大変なことか。けれど、諦めたくないんです。このまま諦めたら、悲しみは繰り返されます。呪いを解く方法はある。皆を、救う方法はあるなら、私は希望を捨てたくない」
「お前の探し物なら知っている。その存在も、その在りかもな」
「え」
突如放たれた王子様の言葉に、耳を疑う。
「鏡の在りかを、知っているんですか!」
私が問いかけても、王子様からは答えはなく、話すことも首を振ることもしない。ただ、私をじっと見つめているだけだ。まるで、私の心の中を探っているように。
「教えてください! 鏡は、どこにあるんですか!」
一刻も早く見つけたい。見つけなきゃならない。世界が崩壊する前に、女王様に捕まる前に鏡を見つけなきゃ。
焦る私とは対照的に、王子様と時計屋さんは落ち着いていて、女王様の城に負けないくらい広い部屋に、王子様の冷静な声が響く。 冷静に告げられたその言葉は、女王様との相対を思い出させるものだった。
「鏡の在りかなら知っている。だが、教えることは出来ない」
「どう、して、ですか」
一瞬、自分の中の時間が凍りついたように止まる。けれどここで挫けている場合じゃなかった。喉が押し潰されそうな感覚があったけれど、懸命に声を振り絞る。
「鏡だけあっても無駄だ。アレはウサギが揃わねば意味を成さない。忌まわしい魔女がそういう呪いをかけた」
「ウサギが揃わなければ、意味を成さない?」
先程から告げられる王子様の言葉は難しく聞こえて、新しく入ってくる情報は耳から耳へ流れそうになる。頑張って、考えるんだ。
「鏡は魔女が残していった呪いを解く鍵。鏡を割れば、呪いは解けるそうです。しかし、鏡を割ることが出来るのは、白ウサギと黒ウサギ、両方が揃った時のみ」
頭を抱えて考え込む私の手助けをするように、時計屋さんが解説してくれる。けれどそれも難しいもので、頭がショートしそうだった。
「ウサギが必要」
「でもウサギは揃わない」
「これじゃあ呪いが」
「解けるはずないな」
ディーとダムが歌を歌うように言葉を紡ぐ。ディーとダムの言葉で、頭の中の整理が出来て、すんなりと頭に入っていく。
呪いを解くには鏡が必要だけど、鏡を使うには白ウサギ、黒ウサギ、二人が必要。けれど二人が揃うことはないから、呪いは解けるはずがない。
「意地の悪い魔女の」
「考えそうなことだよね」
「じゃあ、呪いは解けないの?」
残酷で無情な鏡の真実。絶望に、足の力が抜けていく。王子様の前にも関わらず、最終的に座り込んでしまった。
せっかく呪いを解くのに繋がる鍵を見つけたと思ったのに。他に呪いを解く方法を私は知らない。このままじゃ、白ウサギとの約束を。
「桃色のアリス」
王子様の威圧的な呼び掛けに、はっと頭をあげる。
「お前に呪いを解く覚悟はあるか」
呪いを解く、覚悟。それは、今まで何度も確かめてきたもの。けれど鏡の無情な真実に、私の覚悟は揺らぎつつある。
私に出来るの?
世界の、皆の命がかかっている。夢で終わらすことなんて出来ない。
現実を突き付けられた今、覚悟があるなんて言えない。言えないよ。
答えることが出来ない。けど、ここで諦めることはしなくない。だって、ここに来るまでに、多くの悲しみを知った。崩壊の叫びを、心からの願いを聞いた。
思い出して、自分がした決意を。
「お前の探し物なら知っている。その存在も、その在りかもな」
「え」
突如放たれた王子様の言葉に、耳を疑う。
「鏡の在りかを、知っているんですか!」
私が問いかけても、王子様からは答えはなく、話すことも首を振ることもしない。ただ、私をじっと見つめているだけだ。まるで、私の心の中を探っているように。
「教えてください! 鏡は、どこにあるんですか!」
一刻も早く見つけたい。見つけなきゃならない。世界が崩壊する前に、女王様に捕まる前に鏡を見つけなきゃ。
焦る私とは対照的に、王子様と時計屋さんは落ち着いていて、女王様の城に負けないくらい広い部屋に、王子様の冷静な声が響く。 冷静に告げられたその言葉は、女王様との相対を思い出させるものだった。
「鏡の在りかなら知っている。だが、教えることは出来ない」
「どう、して、ですか」
一瞬、自分の中の時間が凍りついたように止まる。けれどここで挫けている場合じゃなかった。喉が押し潰されそうな感覚があったけれど、懸命に声を振り絞る。
「鏡だけあっても無駄だ。アレはウサギが揃わねば意味を成さない。忌まわしい魔女がそういう呪いをかけた」
「ウサギが揃わなければ、意味を成さない?」
先程から告げられる王子様の言葉は難しく聞こえて、新しく入ってくる情報は耳から耳へ流れそうになる。頑張って、考えるんだ。
「鏡は魔女が残していった呪いを解く鍵。鏡を割れば、呪いは解けるそうです。しかし、鏡を割ることが出来るのは、白ウサギと黒ウサギ、両方が揃った時のみ」
頭を抱えて考え込む私の手助けをするように、時計屋さんが解説してくれる。けれどそれも難しいもので、頭がショートしそうだった。
「ウサギが必要」
「でもウサギは揃わない」
「これじゃあ呪いが」
「解けるはずないな」
ディーとダムが歌を歌うように言葉を紡ぐ。ディーとダムの言葉で、頭の中の整理が出来て、すんなりと頭に入っていく。
呪いを解くには鏡が必要だけど、鏡を使うには白ウサギ、黒ウサギ、二人が必要。けれど二人が揃うことはないから、呪いは解けるはずがない。
「意地の悪い魔女の」
「考えそうなことだよね」
「じゃあ、呪いは解けないの?」
残酷で無情な鏡の真実。絶望に、足の力が抜けていく。王子様の前にも関わらず、最終的に座り込んでしまった。
せっかく呪いを解くのに繋がる鍵を見つけたと思ったのに。他に呪いを解く方法を私は知らない。このままじゃ、白ウサギとの約束を。
「桃色のアリス」
王子様の威圧的な呼び掛けに、はっと頭をあげる。
「お前に呪いを解く覚悟はあるか」
呪いを解く、覚悟。それは、今まで何度も確かめてきたもの。けれど鏡の無情な真実に、私の覚悟は揺らぎつつある。
私に出来るの?
世界の、皆の命がかかっている。夢で終わらすことなんて出来ない。
現実を突き付けられた今、覚悟があるなんて言えない。言えないよ。
答えることが出来ない。けど、ここで諦めることはしなくない。だって、ここに来るまでに、多くの悲しみを知った。崩壊の叫びを、心からの願いを聞いた。
思い出して、自分がした決意を。

