お抹茶王子にキョーミないですっ!

「合宿中の、あまりに突然のことだったから。もしかして部員間でなにかあったんじゃないか、と」

「い、いえ、なにも……」


 答えると先生は数秒わたしを見つめて、それから「そうですか」と小さく頷いた。

 そしてこんな話を聞かせてくれた。


「龍崎くんが入部してから、よくこういうトラブルがあって。要は龍崎くんに近づきすぎたと判断された生徒がほかの部員たちの標的になってしまう、という」

「へ」と答えながら、ぞくりと寒気がした。

「わ、わたしはちがいます」

 慌てて否定すると「そう?」と先生は小首を傾げた。


 さつき先輩とマサミ先生がわたしのことをどう思ってるかは正直わかんない。

 でも少なくとも、マヨ、ポウちゃん、やよいちゃん……にはたまに睨まれちゃうけど、それでも同学年のみんなとは仲良くやれてた。一緒にいて『楽しい』ってちゃんと思えてた。

 それから、茶道も。

 ちゃんと、好きになってた。『友達に連れられて』っていう始まりだったけど、それでもわたしは龍崎先輩のお陰でちゃんと茶道と出会って、向き合って、「もっと上達したい」って「もっとよく知りたい」って、本気で思ってたんだ。


 だから本当は、まだまだ全然足りなくて。

 もっも、もっと、部活がしたかった。


 うん、したかったんだよ、わたしは。


 みんなと。
 龍崎先輩と。
 茶道がしたかったんだよ。


 先生に、それを言ってもいいかな。

 それとも、やっぱり『本音』は言っちゃだめ?


「あら? 西尾さん……?」

 目の前の先生の顔が、ぐんにゃり歪んでゆく。溢れる気持ちが雫となって、熱くなったわたしの頬を掠めて、ぽたた、と床に落ちた。