お抹茶王子にキョーミないですっ!

 ちょうど振り子時計がボーン、と六つ鳴り出した。

 真夏の6時はまだぼんやりと明るい。虫の声が遠くで聴こえる。


「……なん、ですって?」

「お父さんと。『龍崎 俊哉(としや)』さんと、先ほどまで会っていました」


 母の顔色が明らかに変わった。青ざめた、と言っていいと思う。


「手紙をもらったんです。15の誕生日に」

「どうして私に言わなかったの!」
「言ったらすぐに取り上げて捨てたでしょう?」

 母は黙った。


「お父さんは、僕の自立を応援してくれるそうです」

「自立……ですって? あなたが?」

「はい」


 また一時(いっとき)の間が空く。振り子時計のカッコチだけが部屋に鳴る。


「高校からは、ひとりで暮らします」

「馬鹿なことを言わないでちょうだい」

「真面目に話しています。お父さんと相談して、そう決めました」


 母は頬とこめかみを押さえるようにして、ふらりと隅のイスに腰を降ろした。


「子どものあなたに一人暮らしなどさせられるわけないでしょう」

「15はもう子どもじゃない」
「15はまだ子どもですっ!」


 ひりひりとこちらを見るその目は赤く、よく見ると濡れていた。

 そこに追い討ちをかけるわけではないけれど、母にはもうひとつ伝えなければならないことがある。


「お爺様に『お菊』を、終えさせていただきました」

「なっ……」