お抹茶王子にキョーミないですっ!

 翌朝は日の出前に起きて中学校の制服に身を包んだ。

 お爺様が起きたら挨拶をしてすぐにお屋敷出ようと荷物をまとめて準備を整える。


「うわ。ほんまに男子やん」

 声に驚いて振り向くと、障子戸の脇にパジャマ姿の綾音嬢が立っていた。


「ごめん、起こしてしまった?」

「んーん。お菊ちゃんがおらんなる気がしたから。気になって勝手に目ぇ覚めたんよ」

 言いつつ座敷に入ってきて改めてというように僕の制服姿を眺めてきた。


「へぇ。なかなかかっこええやん。綾音は男性(こっち)の『千菊』のが好きやな」

「……はは」

「もうここには来んの?」

「さあ……。少なくとも、『お菊』では来ないかな」


 答えると綾音嬢は「そ」と察したように微笑んで「ほんならね」とあっさり手を挙げたかと思うといきなり「くふぁ」とかわいくあくびをした。

「やっぱ眠い。もうひと眠りするわぁ」


 障子戸のところで「また()うてね、千菊」と軽く振り向いたその目が涙で潤んでいたように見えたのは、あくびのせい、ということにしておこうかな。



「先に帰ります、と母に」

 起床されたお爺様に挨拶をするとともに母への伝言も頼んでお屋敷を後にした。


 抗議する気はもうなかった。それよりも、一刻も早く自宅に帰って調べたいことがあった。