お抹茶王子にキョーミないですっ!


 *


 旅館を出てお母さんの車に乗ったら涙が止まらなくなってしまった。

 後部座席でずっと泣いた。辛くて、足よりも心が痛くて、わんわん泣いた。


 やがて疲れてただぼうっと流れる景色を眺めた。

 するとふいに泣き腫れた自分の顔がガラス窓に写るから、嫌で急いで膝に視線を落とす。


 お母さんがわたしに訊いたのは「晩ごはんなにがいい?」だけで、わたしは「レトルトカレーでいい」と小さく答えた。


 なにも考えられない気がしていた。

 けど、それじゃダメかな、とぼんやり思った。


 わたしはちゃんと今日あったことを思い出して、考えないといけない。そう思った。


 ・どうして捻挫したんだった?

 ・そのあとなにがあったんだった?

 ・龍崎先輩からなにを言われた?

 ・わたしはどうなった?

 ・わたしはどうしたい?


 家に着いてカレーを食べ終えると、お風呂に浸かって髪を乾かして、そして部屋でひとり、ベッドに腰掛けた。


 一度整理しよう。


 そうして、思い出す。

 『お菊ちゃん』の姿の龍崎先輩。その頬を叩いたマサミ先生。それから。


 ──スズちゃんが好きだ。


「……」

 ごろん、とベッドに寝転んだ。天井は白くて、電気は丸かった。