お抹茶王子にキョーミないですっ!

「わあ、お久しぶりです、先生」

「懐かしいわ。お変わりないわねぇ」


 にこにこと会話をしながら二人はエレベーターへと消えていく。


「待って! ……っ!?」

 追おうとする僕の腕を、誰かが強く掴んだ。


「さつきさんっ、どうして」

 許嫁を降りたのに、なぜ邪魔をする?


「マサミ先生を尊敬する気持ちは変わりませんから」

「な……」

「先生から頼まれましたので。あなたを捕まえておくように、と」


 ぞくり、と寒気がした。

 そのまま「こちらへ」と強引にエレベーターホールから離される。

 向かったのはすぐ近くの客間だった。


「先生のお知り合いの方が何名かお見えですので。息子としてご挨拶をしておくように、と」

 抗議する隙もなく相手方と目が合ってしまい逃げられなくなった。


「……すみません、こんな格好で」

「えぇのえぇの。あんたは和服の方がよう似合うてるわ。大きならはったねぇ。もう中学三年やて?」
「ほんま、立派や」
「千菊くんがこんな立派ならマサミさんもそら安心やわ」



 30分ほどしてようやく解放されて部屋に戻ると、西日が明るく射し込むそこにはもう誰もいなかった。


 この気持ちはなんだろう。


 虚しさ、憤り、悲しみ、……怒り。

 そしてそう感じている自分への、驚き。


 僕は、生まれて初めて母に疑問と反発心を抱いた。