お抹茶王子にキョーミないですっ!

 ふう、と息をついて近くの長椅子に腰を降ろす。

 母はなにを考えているのか。

 僕が反抗したからだろうか。その罰として、スズちゃんを……?

 だとしたらあまりに理不尽だ。

 いくら僕の母親だからといって、スズちゃんから茶道を取り上げる権利はない。


 ほどなくして出入口から賑やかな声がしたので顔を上げると、一年生たちが帰館してきた。


「ぅあれ!? 龍崎先輩!?」

 目を丸くするのは根岸さんだ。

「おかえりなさい」と声をかけると、一気に顔を赤くして「おつかれさまですっ!」と勢いよくお辞儀をしてくる。つられてほかの子たちも。


 ひー。びっくりしたー。
 浴衣姿だったね。
 ヤバかった、気絶するかと思った。


 などという声がしつつ遠ざかる。

 母は、まだか。
 日はまだ高く、照らされて外は白く光る。


 一度スズちゃんのもとへ戻ろう、と思ったその時だった。


 まぶしい自動ドアからひとりの女性が入館してきた。

 少し不慣れな様子で周りを見つつ、受付へと進む。


「あの……ここに茶道部の合宿で泊めていただいている『西尾 スズ』の母なのですが」


 話す内容が聞こえて僕は思わず立ち上がった。


「体調不良と聞きまして。迎えに参りました」


 ……!?


 やられた。


 待って。ちょっと待ってください。

 そう声を出そうとした僕の脇から、「あら西尾さん?」と聞き慣れた声がする。

 母だった。