お抹茶王子にキョーミないですっ!


 *


 それはあまりにもあっという間の出来事で、僕に反抗できる余地はなかった。


 ──西尾さんには茶道部を退部していただきます。


 足を怪我したスズちゃんに「ここで待っていて」と言って部屋を飛び出した。


 さつきさんの姿はすぐに見つけられた。


「さつきさん」

「なんでしょう」


 ぞっとするほど、冷えた目だった。


「母はどこです」


 さあ? と首を傾げられてしまったから、そのままロビーへと降りた。



「マサミさまは外出されております」

 旅館の人に教えてもらって、出入口の自動ドアを睨んだ。

 夕刻前の真夏の外はまだ日が高い。


 ──ぱぁん!


 フラッシュバックするみたいに、記憶が甦る。


 ──気味が悪いの!


 母が僕のことを、そんなふうに思っていたなんて。


 正直、かなりショックだった。


 ひょっとすれば僕は自らのこの大きな身長が嫌で、しっかりとした骨格が嫌で、低い声が嫌で、今すぐにこの世から消えてなくなろうとしたかもしれない。

 だけど。


 ──気味が悪いとは、わたしは思わないですよ。


 スズちゃん。

 たったひとりの君にそう言ってもらえただけで、僕は心底救われた。


 母よりも、僕自身よりも、誰よりも、『あの姿』の僕を受け入れてくれた。


 ──先輩は、お菊ちゃんはいつだって素敵です。


 やっぱり僕は、スズちゃんが
「千菊くん」


「……なに。さつきさん」