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それはあまりにもあっという間の出来事で、僕に反抗できる余地はなかった。
──西尾さんには茶道部を退部していただきます。
足を怪我したスズちゃんに「ここで待っていて」と言って部屋を飛び出した。
さつきさんの姿はすぐに見つけられた。
「さつきさん」
「なんでしょう」
ぞっとするほど、冷えた目だった。
「母はどこです」
さあ? と首を傾げられてしまったから、そのままロビーへと降りた。
「マサミさまは外出されております」
旅館の人に教えてもらって、出入口の自動ドアを睨んだ。
夕刻前の真夏の外はまだ日が高い。
──ぱぁん!
フラッシュバックするみたいに、記憶が甦る。
──気味が悪いの!
母が僕のことを、そんなふうに思っていたなんて。
正直、かなりショックだった。
ひょっとすれば僕は自らのこの大きな身長が嫌で、しっかりとした骨格が嫌で、低い声が嫌で、今すぐにこの世から消えてなくなろうとしたかもしれない。
だけど。
──気味が悪いとは、わたしは思わないですよ。
スズちゃん。
たったひとりの君にそう言ってもらえただけで、僕は心底救われた。
母よりも、僕自身よりも、誰よりも、『あの姿』の僕を受け入れてくれた。
──先輩は、お菊ちゃんはいつだって素敵です。
やっぱり僕は、スズちゃんが
「千菊くん」
「……なに。さつきさん」
