「中学に上がる前に、幼馴染だったさつきさんを許嫁として紹介された。湧いたのは反発ではなく安堵の気持ちだった。母の期待に添えたのなら、僕はなんだってよかったんだ」
先輩は自身の前に置いた茶器を両手で優雅に持ち上げるとすらり、とその口もとへ傾ける。「スズちゃんも遠慮なく」とわたしにも促すから、「あ、はい」と慌ててわたしも口に運んだ。
美しく透ける若草色。
熱すぎず、湯気とともに茶葉の香りが立って苦味が丸い、ほのかに甘みのある上品な味。こんなに美味しいのはたぶん、淹れ方がいいからだよね。
「だからこれからも、僕は母の望むままに生きていくつもりだった。……けど」
先輩はゆっくりと置いた茶器からわたしへとその視線を向ける。
「母の、あの言葉にだけは」
──西尾さんから離れなさいっ!
「どうしても従えなかった」
「先輩……?」
「こんなことは、初めてで。僕は……んん」
言いながら、ゴンッ、と座卓に自分の額を打ち付けた。
「っわ、先輩!?」
「自分で自分がよくわからない……」
そうしてぽつりと、こう言った。
「スズちゃんが好きだ」
え、え。えええええええっ!?
先輩は自身の前に置いた茶器を両手で優雅に持ち上げるとすらり、とその口もとへ傾ける。「スズちゃんも遠慮なく」とわたしにも促すから、「あ、はい」と慌ててわたしも口に運んだ。
美しく透ける若草色。
熱すぎず、湯気とともに茶葉の香りが立って苦味が丸い、ほのかに甘みのある上品な味。こんなに美味しいのはたぶん、淹れ方がいいからだよね。
「だからこれからも、僕は母の望むままに生きていくつもりだった。……けど」
先輩はゆっくりと置いた茶器からわたしへとその視線を向ける。
「母の、あの言葉にだけは」
──西尾さんから離れなさいっ!
「どうしても従えなかった」
「先輩……?」
「こんなことは、初めてで。僕は……んん」
言いながら、ゴンッ、と座卓に自分の額を打ち付けた。
「っわ、先輩!?」
「自分で自分がよくわからない……」
そうしてぽつりと、こう言った。
「スズちゃんが好きだ」
え、え。えええええええっ!?
