「だけど生まれたのは、男の僕で。父とは早くに別れてしまっていたからきょうだいを作ることも叶わなかった。……だから僕を、女の子として育てることにしたんだ」
それで龍崎先輩は、『お菊ちゃん』だったんだそう。『千菊』という名もそう。普段から髪を伸ばさせて、お茶のお稽古の時は女の子の着物を着せた。
「嫌だなんて気持ちは特になかった。僕にとっては普通のことだったし、母は喜んで褒めてくれる。僕もそんな自分が誇らしかった」
──ほんとうに美しいわ。千菊さん。
京都のお屋敷に住む親戚の『お爺様』に見初められたのもこの頃だったそう。
──わしと会う時はいつもその姿でおってくれ。お菊よ。
「小学校に上がると、母の監視の目は厳しくなった」
筋肉が付くからと友達と外で遊ぶことは禁止された。危ないからと自転車も与えてもらえず、白い肌を守るために常に長袖で、体育の授業もほとんど見学にされていたんだそう。
──でも、ユウトくんと約束が
──ぱちん!
──あなたは普通とは違うの!
「だけど高学年になると、だんだん背が伸びはじめて。自然に身体も骨ばって硬くなってきた」
男らしく成長してゆく先輩をマサミ先生はとても嫌がったという。
──はあ。また背が伸びて。
「すると母はいよいよ僕を見限るようになった」
──これからのあなたにできるのは、優秀な嫁をもらえるよう努力することだけです。
「僕はそれがとても悲しくて。こうなったら母が望む『優秀なお嫁さん』をもらえるように一層茶道に打ち込むよりほかなかった。普段の身なりや所作にも一層気をつかって、自分を磨いた」
それが『お抹茶王子』のはじまりだったんだ。
それで龍崎先輩は、『お菊ちゃん』だったんだそう。『千菊』という名もそう。普段から髪を伸ばさせて、お茶のお稽古の時は女の子の着物を着せた。
「嫌だなんて気持ちは特になかった。僕にとっては普通のことだったし、母は喜んで褒めてくれる。僕もそんな自分が誇らしかった」
──ほんとうに美しいわ。千菊さん。
京都のお屋敷に住む親戚の『お爺様』に見初められたのもこの頃だったそう。
──わしと会う時はいつもその姿でおってくれ。お菊よ。
「小学校に上がると、母の監視の目は厳しくなった」
筋肉が付くからと友達と外で遊ぶことは禁止された。危ないからと自転車も与えてもらえず、白い肌を守るために常に長袖で、体育の授業もほとんど見学にされていたんだそう。
──でも、ユウトくんと約束が
──ぱちん!
──あなたは普通とは違うの!
「だけど高学年になると、だんだん背が伸びはじめて。自然に身体も骨ばって硬くなってきた」
男らしく成長してゆく先輩をマサミ先生はとても嫌がったという。
──はあ。また背が伸びて。
「すると母はいよいよ僕を見限るようになった」
──これからのあなたにできるのは、優秀な嫁をもらえるよう努力することだけです。
「僕はそれがとても悲しくて。こうなったら母が望む『優秀なお嫁さん』をもらえるように一層茶道に打ち込むよりほかなかった。普段の身なりや所作にも一層気をつかって、自分を磨いた」
それが『お抹茶王子』のはじまりだったんだ。
