お抹茶王子にキョーミないですっ!

 部屋に着くと龍崎先輩はわたしを座布団を並べた畳の上へ優しく寝かせて、自分は着ていた和服を脱ぎ捨てるようにして取り去ってゆき、シャワー室でそのすべてを落としてきた。


 濡れた髪をタオルで拭きながら現れたのは、旅館の、男性用の浴衣を素敵に着こなした龍崎先輩だった。


「格好悪いところを見せてしまったね」


 眉を下げて微笑みながら当たり前みたいに備え付けの煎茶を淹れ始める。

 これも茶道の一環? 手つきがやっぱり美しすぎた。


 すみません、と慌てて起き上がるわたしの前に「どうぞ」と煎茶が入った茶器を差し出す。


「あ、ありがとうございます」

 ぺこりと頭を下げると、「畏まらなくていいよ」と先輩は微笑んだ。

 そうして自分の分の煎茶も座卓に置いて姿勢よく座った。


「はじめて、母に反抗したよ」

「そ、そうなんですか」


 それはすごいことだ。というかこれまでそうならなかったことがまずすごい。


「自分でも、信じられない。有り得ない。だから母も相当驚いたと思う」


 先輩は自分の煎茶を見下ろすように眺めて、ふう、と小さく息をついた。


「母は女の子が欲しかったんだ」

 そうしてぽつぽつと、話しはじめた。