お抹茶王子にキョーミないですっ!

 ……で、ええと。わたしはどうすれば?


 思うものの助けてくれる人は誰もいない。仕方なく痛む足を引きずりながら旅館の入口のほうへと向かった。するとまたふわり、と体が宙に浮く。

 ……え。


「せ、先輩……?」

「部屋まで送る」

「でも」
「いいよ」

「千菊さん?」


 また鋭い先生の声。

 先輩はピタリとその場に足をとめた。


「これ以上の勝手は許しませんよ。西尾さんから離れなさい。彼女の手当ては私がやりますので」

「……」

 先輩は答えなかった。その表情はまるで「はい」と反射的に答えてしまうのを、ぐっとこらえてるみたいだった。


「聞こえませんか? 西尾さんから離れなさいっ!」


「…………嫌です」


「は?」


「嫌です!」


 予想外だったのか、マサミ先生は「な」と固まった。


「着替えます」

「な……なにを言っているの、千菊」

「茶事までには、もとの姿でお屋敷に戻ります」


 なにか言い返そうとしていたマサミ先生のそばに彩音ちゃんのために呼んだ車がちょうど到着する。

 先生が運転手さんに話しかけられている間に先輩はわたしを抱えたまま旅館の中へと歩みを進めた。