お抹茶王子にキョーミないですっ!

 あ……。こんなところ彩音ちゃんに見せちゃダメなんじゃ、とハッとしてからワタワタ慌てるけど今更だ。

 案外平気そうなお嬢様は「うーわ、いたそ」と目を細めて自身の頬を押さえていた。


「そもそもその姿での外出は認めていません。あなたのその大柄な背丈は目立って仕方がないの。いくら顔が美しくても、あなたは男なのです! 声だって低くて、気味が悪いの!」

 先生は言ってから「しまった」という顔をしてコホン、とひとつ咳払いをした。

 先輩は俯いたままで動かない。


「夕刻までしっかりと反省なさい。夜の茶事(ちゃじ)は必ず出るのですよ」


「憐れやなあ」と彩音ちゃんが小声でつぶやいた。

「生き地獄やん。ウチはぜったいあんなんなりたないわ」

 生き地獄……だなんて。


 それからマサミ先生は何事もなかったように龍崎先輩の横を通ってこちらに歩いてくると「迎えを呼びましょうね」と彩音ちゃんに笑いかけた。

「おおきに」とお上品に答える彩音ちゃんの姿は正真正銘の『お嬢様』だった。