お抹茶王子にキョーミないですっ!

「先輩、なんでその……『お菊ちゃん』の格好をしてるんですか?」


 すると先輩は美しく微笑んで「仕事のようなものかな」と答えた。


「彩音嬢のお爺様は母の遠縁の親戚にあたるんだ。その人が僕の点てるお茶をとても気に入ってくださって。毎年夏と冬にこうして京都まで来させていただくんだ」


 う……? その言い方だとなんか、合宿のほうが『ついで』みたいですね?


「男性の格好じゃダメ……なんですか?」
「ダメだね」


 即答されて、彩音ちゃんの手前それ以上は聞けなくなった。

 と、思ったのに。


「ほんまは嫌やねんけど、って言うたったらええのに」


 ええ!? まさか彩音ちゃんがそんなことを言うなんて!


 先輩はまた「ふ」と笑う。


「嫌ではないよ」
「うそや」

「お爺様が喜んでくださるんだから」

「じぃじ、ただの変人やん。部屋じゅうお人形さんだらけで、ウチ怖ぁてかなわん」


 ずいぶん大人びてるんだな、彩音ちゃんって。


「彩音嬢、お爺様の悪口はよして」

「喋れるんなら嫌なことは嫌ってちゃんと言わなあかんよ、お菊ちゃん」


 すると先輩はまた例の困ったような笑顔を見せた。