お抹茶王子にキョーミないですっ!

 間一髪、とはこういうことを言う。


「い……ったぁ……」

 横倒しになったわたしの身体(からだ)の下に、艶やかな着物の生地があった。


 って……、それはつまり……。


 わたしは咄嗟に駆けつけたお菊ちゃんに転げるように抱きしめられて、車に跳ねられずに済んだんだ。


 艶やかな着物に包まれたその身は、しっかりと硬くて、やっぱり男の人のものだった。

「大丈夫!? スズちゃん、怪我、ない?」
「ひっ、せんぱい……」

 う、わわ。いけない! わたしのせいで綺麗なお着物が台無し。砂埃もたくさん付いて、これってクリーニングとか出せるのかな!?


「す、すみませんっ! だだっ、大丈夫ですっ」


 慌てて立ち上がるとズキン、と右足が痛んだ。

 ひいい、立てない!? たまらずよろけると「無理しないで」と手を掴まれてそして、「あ、あの……」


「あぁぁぁぁ。無事でよかったぁ」


 ぎゅう、と痛いくらいに抱きしめられてしまった。


 【恋に堕ちる瞬間はどこにでも転がってる】


 どこにでも。京都の、町にも?