お抹茶王子にキョーミないですっ!

 キョロキョロと辺りを見回すと、麦わら帽子の小さな女の子が、たた、とわたしの後ろを走って通り過ぎた。そしてその後ろから。

 艶やかな着物が見えた。


 チリン。


 また風鈴の音のような幻聴。

 白い肌に(べに)を引いた唇。通った鼻筋に、優しい瞳。揺れるかんざし。そしてすらりと高い身長。


 見間違いじゃない。間違うはずがない。

 だって『その人』は、あの日のままの、いや、あの日より美しくなった、


 お菊ちゃんだったんだから。


 困ったような笑みを見せながら、それでもするすると美しく歩みを進める。

 たぶん先に行った女の子を追っているはずなんだけど、声は一切出してない。


 そうか。だって『声』は。

 ……男性だから。


 通りがけに一瞬、目が合った、気がした。


「りゅ……」
 声を掛けてはいけない。

 瞬間的に察して咄嗟に口を噤んだ。