お抹茶王子にキョーミないですっ!

 茶舗で昼食をとってからは夕方まで自由行動となった。

 わたしたち一年生チームは『通りをぶらぶら買い物ツアー』と、やよいちゃんのアツい希望でお寺も一箇所だけ行くことに。


大徳寺(だいとくじ)……って昨日みんなで行かなかった?」

「ええ。復習です。ここには茶道部として学ぶべきことがまだまだあるので、自由行動の時間にも来たかったの」


 げえー、退屈だよーと文句を垂れるマヨをやよいちゃんは「『興味がない』ではなくて『興味を持つ』の」と一喝した。


「ほらご覧になって。ここはかの有名な千利休ゆかりの寺院で────」


 ふむふむ、ほー。とやよいちゃんの小難しい説明を真面目に聞くポウちゃんの横で「早くお買い物行こうようー」とごねるマヨ。

 んふふ。けっこうバランスいいチームじゃない? わたしたち。なんて自分で思ってくすりと笑った。


 龍崎先輩がいなければやよいちゃんもわたしを特別睨んだりしないし、さつき先輩もいつもより穏やかな気がする。

 ……って、え?
 龍崎先輩の存在って……。


 いや、いや、いや。

 なにひどいこと考えてんの、わたし。
 我ら茶道部は、龍崎先輩あっての茶道部なのに。



 みんなとお参りしたり買い物をして過ごす時間は本当に楽しくて。わたしはさっきバスから見た着物姿の人のことはもうすっかり忘れていた。


 忘れていたのに。


「お菊ちゃーん! もう、おっそい! はよ歩きんさいな、もぉう」


 おみやげ屋さんの軒先で見ていたキーホルダーからぱっと顔を上げる。


 だって今、誰か『お菊ちゃん』って言ったよね?