お抹茶王子にキョーミないですっ!

 ……なんだろう。

 わたしも倣ってその方向を見た。

 すると「えっ」と思わず声が出てしまって慌てて手で口を塞ぐ。


 通りを歩く、艶やかな着物姿の女性。夏の暑さを感じさせない白い肌、凛とした佇まい。美しく結わえ上げられた黒髪。


 ──チリン。

 なぜか風鈴の音のような幻聴がした。


 お菊ちゃん……?


 まさか。そんなはずないよね?


 バスは『その人』をあっさり追い抜いてゆるゆると進む。


 ドクン、ドクン、と心臓が鳴る。

 見間違いかもしれない。似てただけかも。そう、きっとそうだよ。だってここは京都だもん。和服姿の人なんてたくさんいる。そう。そうだ。

 似てただけだ。