「ひい。『お抹茶王子』まじですごいね、なにその話。寒気するわ、もうすぐ六月なのに」
くふあ、とあくびをするマヨは茶道部の二年の先輩に誘われて今月からバレー部にも所属したそうで。
机に項垂れつつ「朝練キツイ」と愚痴をこぼしている。
いいな、とちょっと思うけどわたしは運動部はパス。ぜったいチームの足でまといになる自信があるもん。
「もはや庶民の感覚じゃないねぇ」
「そんな人生ってどうなのかな」
マヨは「うーん」と宙を眺めてから「でもさ」とぽつりと言う。
「昔の貴族ってみんなそんなんだったんでしょ? 家がそういう古風な感じならさ、それが普通っていうか、なんとも思わないんじゃん?」
「そうなのかなぁ」
許嫁、かぁ。
お母さんの言いなりの人生。
それが『役目』。
うーん。……っていうかなんでわたし、こんなに深く考えてるんだろう。龍崎先輩自身も「それでいい」って納得してるわけだし、他人のわたしがとやかく言えることじゃないのに。
そう。そうだよ。うん。
よし。このことは一旦忘れよう!
そうしてあっという間に季節は暑い夏を迎えていた。
夏。
そう! 京都合宿だ!
