お抹茶王子にキョーミないですっ!

「じゃあ袱紗(ふくさ)の件は? (わたくし)の袱紗を隠したのもあなたでしょう? 私にマサミ先生の前で恥をかかせようと」

「は、とんだ濡れ衣だね。茶の湯の心を教え込まれている僕がそんな醜い真似をすると思う? さつきさんの単なるミスでしょう」

「とぼけるのはいい加減にして! わかっています。あなたはそれで、先生の(わたくし)に対する印象を悪くして私との『許嫁』の約束を解きたいおつもりなんでしょう!? 西尾さんと恋仲になりたいからって」


 ひぃええええっ! さ、さつき先輩!?


「呆れた人だ。『和敬清寂(わけいせいじゃく)』、茶の湯の心をお忘れでは。今のさつきさんには微塵も感じられないけど」


 ワケイ……なに? よく聞き取れなかったけど、龍崎先輩のその声はいつも通りのとても落ち着いたものだった。


「あなたが私の心を乱しているのっ!」

「ふむ。……第一、さつきさんはそんなに僕と結ばれたいの?」

「それはっ……」


 どきん。無意識にわたしまで唾を飲んでしまった。