お抹茶王子にキョーミないですっ!

「はて。そんなつもりはないけど」

「個人的に呼び出して指導した日もあったと聞きました」

「誇張された噂話を鵜呑みにしてはいけないよ、さつきさん」


 ひいい。な、なんかもうゾクゾク寒い。初夏の陽気は何処(いずこ)へ?


「スズちゃんと二人きりで『自主練』をしたのは一度きりだ。それも仮入部期間中のこと。本人にも確認してみるといいよ。その『一度』だけでほかの子と差が付くとは僕には思えないけど」

「だけど普段の部活動でだって、あなたは彼女だけを特別扱いしているでしょう?」

「当然でしょう。()()()()と接するのは誰でも嬉しいものだ」


 う、とさつき先輩が言葉に詰まるのを感じた。

 ……え。っていうか龍崎先輩、あの、なに言ってます!?


「母だってそうだ。教室で気に入っている生徒さんとそうでない生徒さんは見てすぐわかる。もちろんうわべでは贔屓はダメだと言う。けど人間なんだから。『相性』というものは少なからず誰にでもあるでしょう?」


 あ、ああ、なるほど? 『相性』ね。ラブでなくてライク。そうか、そうですよね?


 そっと部室を覗くと、バチバチと睨み合う二人が見えて慌てて引っ込んだ。