お抹茶王子にキョーミないですっ!

 その日の帰り、部室に忘れ物をしてしまった。

 わたしの大事な体育着。金曜日だからね、これを持ち帰って洗濯しないと、翌週は悪臭だ。


 ああ。だから完全にこれは『たまたま』で、断じて『運命』やら『必然』なんかじゃない。


 ……ないんだってば。


「どういうおつもり?」

「……なんのこと?」
「とぼけないで、千菊くん!」


 開け放たれた部室から、さつき先輩と龍崎先輩のそんな会話が聴こえてしまった。

 うああ、体育着は諦めてさっさと帰る? もちろん考えなかったわけじゃない。

でも。


「あなたがわざと西尾さんを優先的に指導して、マサミ先生に気に入られるように仕向けているのは見え見えなの!」


 こんなことを聞いてしまっては続きを聞かずにいられましょうかっ!

 ああ、わたしの阿呆!

 関わりたくない!
 関わりたくない!
 関わりたくないのにいっ!

 お抹茶王子にキョーミないのにいっ!